彼女はもともとⅢ (ページ29)

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数を数えて！ページ29

「A」

呼ばれて後ろを向くと、お母さんだった。
でもそのお母さんはドロドロととけて、なんで?と私に聞いてくる。

(わからない。わからないよ!)

震える手で助けを求めるも誰も助けてくれはしない。

泣く気力も何もなくなって、何も感じなくなった。

恐怖心だけが私を蝕んでいく。

寂しい。怖い。

あのときと一緒だ。

燃え盛る家と、取り残された私と妹。
捕まった家を燃やしてしまえばすべてが無くなっていく。

妹が白濁に汚れてしまったことも。

私がおかした罪も。

おかしくなる匂いだって。

消えること覚悟だったのに、私達は肺いっぱいに蔓延する一酸化炭素で苦しくて気絶することも叶わなくって、熱くて、火の手は回るし
汗は諾々と流れて体はカラカラで

死を覚悟したのに、寂しくて、怖くて

〈逃げよう、私達にできたからできるよ。〉

大人しく死を待っておけば、犬に喰い殺されることもなかったのに。

二人幸せに…

『幸せって、なに…？？』

酸素が薄くなって、孤独が怖くって
意識が朦朧としてくる。

空に手を伸ばしたけど、真っ暗なこの場所じゃ星さえ見えない。

夢を見ることさえ許されない。

人形は意思を持っては行けない。
人形は動いてはいけない。

私は人形。私は人形。何も感じない人形
可愛らしく笑みを浮かべる人形

〈教えてよ、君の事、世界のこと〉
〈約束する。迎えに行くよ。〉

誰にも知られず目を閉じる。
小さい男の子たちの声が聞こえる。

昔のことだ。忘れてるだろう。

それに、あのとき約束をかわした男の子たちには会えないし。
会えない。会ってはいけない。

〈好き。〉〈好きだよ〉

〈愛してる。〉

ねぇ、私はここに来てから頭がおかしいみたい。

小さい私は小さくはぅ…と息をした。

起きて、まだ私は隠れていたい。
姉を、兄を殺したあの罪から逃げさせて。忘れさせて。

ねぇ、起きて私に教えてよ。

本当の本当は本当じゃないんだっけ?

「A！」

手を伸ばしたあなたに。
あなたは私の手をしっかりと握り、離さないとしっかりと私を抱きしめて、震える手と体で
光へと連れ出した

「いなくなるな。仲間だろ。」

『…ん…』

仲間。と彼は言うけれど

彼はきっと仲間以上に私を

(心地いいの。認める。)

ひどいことされても、死にたくなっても、優しくするのが偽善でも、理由があっても

(私は愛されたい。)

愛されたいよ。