彼女はもともとⅢ (ページ26)

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かくれんぼしましょ！ページ26

なぜ走ってるか、わからない

なぜにげてるか、わからない

なぜおわれてるのか、わからない

なにから追われてるのか、わからない

生きているのか、それすらもわからない。

必死に走って、裸足で走って
外に出たくて、ここはいやで

でも結局、外だと思われたのは、部屋の中で

最後とばかりに開きかけた扉を潜り抜ければ、真っ暗闇であたりは見えない。

時々、何かをカーンと打つ音とバチバチと小さな火花。キュルキュルと何かが動く音と、ガタガタと揺れ動く何か

キラキラと光り輝く鉱石が、覚束ないろうそくの光を反射して鈍く光っていた。

(何もない。なにも…)

歩く速度を緩めた

隠れる場所には向いていない。
ろうそくの光も消えかけている。
地下は湿っぽい。

だから、誰かが来るときはランプだった。

火の光はいつ消えてもおかしくない。

膝から崩れ落ちるように座れば、自分の体を抱いて眠るように目を閉じる。

もういいかい?と声が聞こえる。

まだだめ！と両目を開けて、震える足であたりを探索しようとした。
が、ろうそくの光は消えてしまっていた。

静寂と、孤独と、闇が自分を包み込んで、この先どこにも行かせない。と言っているようだった。

(どうしよう…)

壁を手探りで触れながら奥へ奥へと進む。
バチバチと火花が落ちるところまで行くと、きっと、行き止まりなのだろうそこから道は無かった。

もういいかい、と姉の声が聞こえる。

まだだめ!と奥に進みたいのに壁がある。
線路はその先を続いている。
だして、だして！と叫んでみる。

でも今は狼だって寝ている時間。
誰も起きてはくれやしないし、姉だって起きているはずがない。

見つけた影に隠れる

いつの間にかカウントダウンは進んでいて

さーん、にーい、いーち
Ready or not, here I come!

ケタケタ笑う声が聞こえる。
こわい、つらい、いたい、苦しい、消えたい、いなくなりたい

膝を抱えてきゅっと縮こまる
『こわい』

『おかぁさん…』

妹が目の前で殺されたときも
あの狭くて怖いところに入れられたときも

いつだって私が助けを求めるのは

私を愛してくれない、可愛がってもくれなかった

あの光り輝く蒼色の猛毒の瓶を愛おしそうに撫でて、私に最後を託した

美しく儚い銀髪の

母の事だ