彼女はもともとⅢ (ページ22)

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精神的苦痛ページ22

「幼児退行ね。」

エミリー先生はそう言った。

「どうして…？」

信じられないような声も多数ある。
特に、現場にいなかった女性陣からだ。

それほど酷い物だったんだよ。
彼女の牢獄は。

触れたときのあの体温が、とても冷たかった。
怯えだったのだろうか、そもそも元々低体温なのか。

マイク、とぽんと肩を叩かれたことにより、僕は再び前を見た。

ノートンは前を見て。と僕が話を聞いてなかったかのように話しかける。
聞いてるよ。と今は悪態をつく事もできずに、すっと前を向いた

あの甘い匂いに、血の匂い、そして目の前で行われたあっけない人の命のやり取りと、抱き合って生還を喜ぶ奴隷たち。
哀しそうな顔したAと、触れたときのあの酷いほど冷たい体温。
ほぼ無いと言って過言ではない程の軽い体重。

当初の予定では、女性といえどきちんとした体重はあると思って、交代で運ぶ予定だった。

しかし、彼女は交代がいらないほど軽く、一人でここに運びきってしまった。

治療にと引き受けたエミリー先生がびっくりして目を見開いたことから、その異常性が垣間見えた。

「精神としてにその人の人格や知性が普段の歳相応の状態に比べて、子供のような幼い未発達状態に変わる精神疾患の一種よ」

彼女の場合は、どこまで幼いか分からないから
推測するにまだとても愛されていただろう4，5歳くらいかしらね。

エミリー先生は紙に書き取りながら答えた。
エマちゃんが恐る恐る手を上げた

「エミリー！まずその…よ、ようじたいこう？がよくわからないなの！」

幼児退行、言葉こそ聞いたことはないけど、みんな一度は通ってる筈の道よ。

と彼女は言った。

「言動が子供のようになって周囲との意思疎通が困難になり、本人が現状を理解できなくなる記憶障害も起こるの
症状の期間は人によって違い、治る可能性も定まっていないわ。
原因はやっぱり過去の精神的トラウマに起因することが多い。…まぁ、今回のケースだと、今回の事が原因かしらね。」

淡々と言ってのける彼女に、やっぱり医師なんだと再認識する。

「過去の忌まわしい状況を再体験したり、現状打開ができず耐え難い状況に陥った場合、『現実逃避という防衛機能』として子供に戻ろうとして起こったりするわ。」

良かったわね、発症したのが殺人癖じゃなくて

それは心からの言葉だったのか、はぁ、と大きくため息をついて、治療法は、と言葉を続けた。
催眠で、過去に遡って何が過去に起こったかを探り、現在の問題解決の糸口にする方法ね。

要するに、今はまだ