彼女はもともとⅢ (ページ17)

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明確な殺意ページ17

チェイスタグは得意だった。

屍人を出さないように
みんなの目に触れないように。
兄弟に見つからないように。
捕まったらひどいことされるから。

だから、いつも見えない何かに怯えて、走って、逃げていた。
家具の上にだって乗ってやり過ごしたことだってある。

走って距離を取る。
飛び込んだ先は元私の部屋で、一番甘い臭がして思考を奪う。
しかし、傷が私を正常に留める。

淡い水色で統一された部屋の大きなタンスの中

そこは昔から私の隠れ場所だった。

扉の外から面白そうな声で、笑う。

「ねぇテウ？一番上のネオお兄様から、私まで、あなたより先に人生を生きてるのよ？
だから、私の指図に従うのは道理にかなってなくて？」

余裕綽々。ナイ姉様は返り血のドレスを翻した。

『そうやって、人の命を使って遊ぶナイ姉様にはわからないでしょうね。』

昔から姉は残虐非道な人だった。
従を初めて殺した。
粗相をしたから。

それを、両親は許してしまった。
主従くらいなら買えばいい。と、許してしまった
そこから、死体が廊下を埋めていく

ゲームに負けたから殺した。
テウを傷つけたから殺した。
テウを見たから殺した。

ついには兄弟にも手を出した。

テウの教育に口出しした。
テウに微笑まれた。
テウを視界にいれたから。
テウが好きって言ったから

間接的に私が殺した。

キイッと扉が開く。コツコツと私を探している靴の音。

近くに来たり、遠のいていったり。

バレている。でも、私は動くことができない。
返り討ちに合いそうだ。

こわい

キイッと、嫌な音が耳に触る。
対して明るくもない光が私の目を刺激する。
私の花を、甘い甘い毒が擽る。

「そうね、わからないわ。」

でも、と腰に手を回し、至近距離で私の目を見つめるナイ姉様に、あの日が浮かぶ。

「でも、愛するAの事ならなーんでもしってる。」

ねぇ、と私のウィンプルを優しく取り上げるとすっ、と私の小さかったときに使っていた髪飾りをパチンとつけた。

「似合ってる、可愛い、きれいだわ、テウ。」

甘い言葉に頭がおかしくなりそうだ。

おねがい。グルカナイフよ。私に勇気をください。

おおきく振りかぶって、ナイ姉様にナイフを突き立てた。

あんたなんて死んじまえ。

懺悔しなさい。あの世で、母に。
あなたが手にかけた兄弟に、妹に人々に。

そんな明確な殺意をあの日の様に抱いて狙いを定めて、胸元に突き立てた。