彼女はもともとⅣ (ページ9)

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祝福ページ9

『まって、違う、違うの…』

止めてくれ、皆違うんだ

ここの場に来ていない新人君は褒めたい。
美智子さんや…私違うの…

事の発端は絶対さっきの試合だった。
彼は天眼でこうなることを見ていたんだ。

久々の私の試合、私の試合はモニター越しで見る人も居る。
そしてゲーム待機組はモニターがついているのでこの様子を見ることが出来るだろう。

そこであれが起これば、後はどうなるかは分かるだろう。

人の噂とは怖い物だ

『外堀埋めやがってこのクラークは…』

「と言うことは、A・クラークになるのかな？」

『なりません』

「じゃあイライ・A？」

『なりません！！』

珍しく私は大声を出していたと思う。
切羽詰まってたのもある。

そして理不尽に当たりたくなってしまうことも

周りはしんとして、私はどうしようもなくてぽろぽろと大粒の涙をこぼす。

慌てないで、嫌だって事は無いの
寧ろ人間以下の私が幸せになれるのはうれしいのよ

違うの、貴方が悪いわけじゃない、私が悪いの。

「大丈夫ですか？」

音もなくイソップ君は私の隣に立ちハンカチで涙を拭き始める。
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる優しい彼

あー
この場をまとめて、助けて

「Aさん、行きましょう」

人目のないところで、顔を洗って落ち着きましょう
彼は私が手を取ってくれるのを待っていた
イライの前で

「…行きましょう、ね？」

そうやって優しく肩を抱き扉へと近づいていく。

「…行ってらっしゃい」

貴方が悲しそうな顔をするのは何故？

大きな扉はｷﾞｷﾞｯと音を立てて開く
そのまま彼は私を二階へと連れて行った

二回のバルコニーは少し肌寒いくらいだ。

『違うの』

ずっと、頭にまわる“存在が消える”と言う言葉
そんなの嫌だ。でも私が主にならないと“あるべき姿”になる皆。

どちらの結末に転んでも、最悪なのに今の状態で幸せになってもいいのだろうか

『こわい。』
「なにがです？」

『みんなが、消えるのが』

空虚な言葉は彼にどう伝わったのだろう
きっと顔を上げなくても彼は大きな目で私をじっと見て言葉の真意をくみ取ろうとしてくれているだろう

《『私が死んだら、この体貴方に捧げるわ』》
《「…迎えに行きますよ」》

あの日のミラの葬式の日、彼女の土葬を終えたあの時のように

『何もかもがなくなるのが怖い』

「Aさん…」

あの大きなグレーの目で私を見つめているのだろう