彼女はもともとⅣ (ページ44)

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別れページ44

ベッドの上の妹は目を開けた。

『最後のプレゼントをありがとう』

さいごまで招待状の言葉の意味は分からなかった。

願が叶う。

多額の賞金が出る。

そんな安っぽい言葉の一番下には確かな筆跡でこう書かれてる。

《縛られた彼らを解き放つとき
己の願望が満たされるだろう。》

つまりは大半が忘れてしまった今の荘園主である彼女を忘れない人たち

その人たちが希望を持たぬよう、絶望させないよう私が荘園主となり記憶の改ざんを行うことで

全てが救われる。全てが赦される

そういうことだろう。

彼女は元々私の幸せを願い
そして私に最終的には私に荘園主の権限を譲るために
彼女だけでも、私を赦すためにここにまどろっこしいやり方で呼んだわけだ。

『昔から変わらない
やさしいのね。あなた。』

「えっ…えっ？！」
彼女は何もしなくてもダメージが入る。
それはとても純粋だから

「なんでっ？！」
彼女は何もしなくても最初に見つかる。
それは彼女がとても明るいから

「…あれ、あなた社交恐怖症では…」
彼女は何もしなくても人気者で
とても人なつっこい子だから。

【みて！これすごいでしょ！！】
彼女はもともと、明るくやんちゃな優しい子

「あ、あ、あぁ…そんな…」
彼女は元々から繊細な子だった。

「神を信じましょう。あなたの罪は許されます」
もともと彼女は私の希望(神様)だった

わたしは
多額の賞金につられて願いを叶えるために私はここに来た。

賞金があれば、願いである家族の皆殺しが出来るから。

でも彼女はそうしなかった。

初代荘園主である彼女は眠りつづけながらも彼らと共にあることを願い
そして私に慈悲を恵んでくださった。

『…ふふ』

そして、観測の機会も。

ああ、彼女こそが真の“神様”なのではないだろうか。

彼女のたった一つの誤算。

それは

純粋すぎる故に、貴方は私がいい子だと信じすぎてたことかしら。

「…テウちゃんがみえる。
いじめられっ子のテウちゃん」

『元気にしてた？大好きなミラ』

よかった、やっと解放されるのね。
彼女は微笑み私の手を握る。

「お姉ちゃんに殺されたかったの。」そう言うと私の掌の中のナイフを胸元に刺した。

泣く暇も、驚く暇さえ与えずに彼女は目を再び閉じた

「契約成立だな。」
「…よかったです。」

イソップは彼女にひざまずき一粒の涙を、流した。

『これから私は荘園主になる。』

「忘れません。貴方のこと」

いいえ、忘れて。

と笑うと彼はかすかに微笑んだ。