彼女はもともとⅣ (ページ39)

今日:11 hit、昨日:9 hit、合計:7,614 hit

聖女幸福理論ページ39

『…まさかドッキリ仕掛けられるとはね。』

「いやだった？」

んーん、幸せ。
そうやって笑えば、イライが良かったと微笑んだ。

『え、みんなが仕掛け人だったの？』

「まぁね」

そっ、と手を握られて写真家の前に立つ。

「今日は綺麗じゃないか。」
『あは、ありがとう。貴方も似合ってるよ。』

失敬な、私はいつでも美しいんだ。と目を伏せたジョゼフ

「あー、二人ともおめでとう。」

『ありがとう』「ありがとう」

ジョゼフは大きく息を吸い、教会一杯に響くほどの大声を上げた。

「この先、妻が君にナイフを向ける未来が見えても
真っ直ぐ家に帰り、
愛し続けることを誓いますか？」

『ちょっと』

私そんな暴力的じゃ無いわ！と言うとイライは私に微笑んで「誓います」と告げた。
よろしい。とジョゼフは笑い、今度は私に問いかける。

「この先、夫の髪の毛の量が変わっても
美味しい手料理を作り
愛し続けることを誓いますか？」

「ねぇちょっと？！」

私のフードは禿げ隠しじゃないって言ってるでしょ？！
とイライが騒ぐと周りはどっと笑った。

『えー、どうしょっかな。』
「A？！」

『冗談よ、誓うわ。』

私達はお互いに約束だからね、と握った手を更に密着させた。
イライの手は少し汗ばんでいた。

「出席の皆のうち、この結婚に正当な理由で異議のある方は、今ここで、異議を申し出ておいで。
今、申し出がなければ、後日、異議を申し立て、二人の平和を破ってはいけないよ。」

しん。とあたりは静まり、異議を上げる者は居なかった。続けてジョゼフが言葉を続けた。

「君たちは常にお互いを愛し、敬い、慰め、助けて、死が二人を分かつまで健やかなときも、病むときも、順境にも、逆境にも、常に真実で、愛情に満ち、お互いに対して堅く節操を守ることを誓約するかい？」

私達は顔を見合わせた。

夢みたいだ。私には次元が違う物だと思っていた。
幸せになれないと思っていた。

幸せそうな人々を見るたびになんで私の母が死なないといけないんだと神を恨み、幸せそうな二人を恨んだ。

まさか、私がこの場に立って好きな人と誓いの言葉を述べるとは思わなかった。

『「私達は常にお互いを愛し、敬い、慰め、助けて、死が二人を分かつまで健やかなときも、病むときも、順境にも、逆境にも、常に真実で、愛情に満ち、お互いに対して堅く節操を守ることを

ジョゼフ牧師と証人の前に謹んで誓約いたします｣』

では、誓いのキスを。

言うが早いか、彼は私にキスをした。