それでも私は ページ31
パチリと目を覚ませば、どこか遠くに居る気がした。
悪趣味な赤いドレスは脱がされており、白のワンピースで私は寝かされていた。
立つ気も何かをする気も起きず、ぼーっとしていて、ふと気がつく部屋の様子。
体がだるい。重いし。
それは、物理的な物でもある。
『……そっか』
簡易的にではあるが手首の自由を奪われた状態で、手も警戒されてるのかミトンがついていた。
犯人は誰かは考えなくても、断片的にある試合の記憶を繋げれば明らかだ。
『イライ』
一言そう彼の名前を呼べば
｢起きたの？｣
と、顔を出した。
嘴の出てる目隠しなんて初めて見たので、きっと新衣装なのだろう
『起きた。ねぇ、ここはどこ？私帰ら｢君のために｣
帰らないと、と言う前に私の目の前に置かれた小さなホットケーキ
｢君のためにホットケーキを焼いたんだ。｣
『…ありがとう』
新衣装が気に入ってるのか脱ぐこともなく私に話しかける。
ジャムは必要かい？それど蜂蜜？
バターはいかがかな？ホットミルクだってあるよ
やたらと食べ物を勧めるイライに私は異議を唱える
『あのさ、私』｢あぁ、洋服は裂けていたから縫い直そうと思っててさ｣
｢ぽっぽちゃんが気に入ったみたいで｣
それはべつにいいのよ。と、私は台の上のホットケーキにジャムをつけた
腕を怪我したときはエミリー先生が私の代わりに食事を口に運んでくれた
ここから帰ってきたときにしばらく私の食事を助けてくれたイソップ君
私の髪を乾かしてくれたヴィラ
みんなに助けられてたんだな
みんなに会いたいよ
試合は？どうなったんだろう。
帰りたい。あの嫌いな部屋に、みんながいる荘園に
イライ、私は帰りたいよ
『イライ、私』
｢あぁ！ミトンを付けっぱなしだったね!今外すよ｣
『イライ』
｢君が腕の傷を無意識に撫でてるようだったから傷つけたらいけないとおもって｣
『イライ』
頬を包んだ。
喋るのをピタッと止めて、私を見つめた。
『お家に返して。みんなに会いたい』
｢それは無理かな｣
私の開いた口は彼の口に閉ざされた
『んっ…？!んぅ…』
トロリととろけそうな舌が私の口内をなぞり荒らす。口の端からは唾液が出る。
「ん…ふっ…」
余裕そうな彼の顔を最後に私は目をつぶる。
そういえば、彼とこうやって唇を合わせるのは久しぶりだ
でも、あれは彼女の代わりであって、私にはされないことで
モヤモヤと心が痛くなる。
｢はぁ…っ…｣
やっと口を離し、彼は笑う
｢返さない。逃がさないよ｣
一体私は何から逃げたらいいのだろう
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作者名：COLOR莓愛 | 作成日時：2020年2月7日 3時
