彼女はもともとⅣ (ページ19)

今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:7,599 hit

相対ページ19

「来たか。」

『ええ、勿論。』

机の上には紙とペンが用意されている。
「招待状だ。」
代々受け継ぐ者が書く手紙だ。と渡された手紙に筆を走らせた。

宛先は一人。貴族の中でも隅で話を書く方が好きな少し変わった、いたずらやサスペンスが好きなあの子。

『…探偵さんへ、と』

ロウで蓋をしてしまうと私がもらったときのあの手紙のようになる。

「一つ目の契約は終わりだ。」

その内、イソップ・カールの部屋に向かうと良い。

彼はそう言って私と別れた。

……

『あー…』

彼の部屋から出ると壁により掛かる。
ずるずると下にしゃがむ。
その先には、楽しそうに談笑する彼と、フィーだ。

フィーはニコニコとイライと談笑する。
(…ただの談笑だ。)
そう言い聞かせているつもりでも、疑念が纏わり付く。

私はいつから、傲慢で強欲になったのだろう。
彼は私の友達であり、親友であり
婚約者の代わりをしているだけだ。

少しでも代わりになってあげようと愛しい人だと思い続けていたから、とうとう頭が狂ったのか。

神に祈ろう。心を落ち着かせよう。

チクチク、シリジリと心臓が蝕まれ

(醜い嫉妬はきらわれる…！)

その場を小走りで去って行った。

『私の人生の導き手である主なる神様
いま私はあなたのみ心を真剣に求めています
右に行くべきか、左に行くべきか
またまっすぐ行くべきか
迷っております』

滑稽だ。

信じてない神様に、こうやって
埃を被った教壇に祈りを捧げるなんて。
二人で笑い合っていただけであんなになるものか
二人とも大切な友達だ。
友達に嫉妬？ナンセンスよ

『どの道があなたのみ心にかなった道か
分りません
主よ、助けて下さい』

神なんて居ないって豪語してたのに
いざとなれば出てくる神へ縋る言葉。

虚空の物に縋るととても虚しい。
分かってるはずなのに口は止まらないし、気持ちは囃し立てる

『いまあなたの道を示してください
あなたの子供があなたの道を
踏みはずすことなく』

フラッシュバックする家のこと
火事、裏切り、拷問、死、殺害

顔がさっと血の気が引いたのが目の前の鏡に映る。

そんな顔をするなんて、二人への冒涜だ。

ただしかし、幸せそうな二人に見えてしまえば
私の心をざわざわと揺り動かして

『あなたの道を強く雄々しく
歩んでいくことができますように
導いてください
主の御名によってアーメン』

堪えきれず私は大きなガラス棚をロザリオで破壊してしまった

全てが全て馬鹿馬鹿しい！！

硝子の破片は私に落ちる。
硝子のハートが砕けるように