彼女はもともとⅣ (ページ17)

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邪神と聖女ページ17

『ん？！』

船の上で海を見ていると触手が私の背中を勢いよく突き落とす。

触手の犯人は一人しか居ない。
大声で叫んでやる。

『てめぇ夕飯のおかずにしてやるからなぁぁっ！！！』

「わぁ～！ほえるポメラニアン並みにこわいのだ～」

語尾にハートでも付きそうなくらいの声で身を乗り出す幼女の邪神、ハスターはケラケラ笑いながら私に手(？)を振った

『たすけてよ、ハスターが突き落としたんだから』

「元々そのつもりぞ。」

ハスターの触手はヌルヌルしてて、しかししっかりと私に絡みつく。

カミソリやはさみのような物で切りつけられてる気がするこの痛みにさえ耐えれば別になんともない気がする。

(人間じゃなくなる。と言うことは彼のようになるのか…？)

なんて思いつつも、濡れた服を絞る。

『しかし、珍しいねここに居るの。』

「我の信者から逃げてただけ…」

遠い目をするハスターに不憫だなと笑う。
そんな私を見てハスターは「笑ったな」と私を何個もある目で見つめていた

見つめ返すと正気じゃなくなりそうなので逸らす。
逸らし、目のない何もない空間を一点に見つめた

『その言い方じゃ、私がずっと笑ってなかったみたいじゃない。』

「ほう、自覚が無いとは…」

ぐにーっと触手を上手に使いこなし、私の頬を抓る

『痛いよ。』

「人の子、最近のお主はなんか変ぞ
虚無を見つめ、何かに畏怖し、縋るように我が信者を見つめている。」

何があった？と聞かないのはこの人(？)の気遣いだろう。

でも、言えない。

『言えないの』

怖いから。

どうしようも無い、覚悟もない、でも会いたい
相談したい。しかし人に話してはいけない話。

でも、現荘園主が死ぬ前までに私は覚悟を決めないといけない。

引き継ぐ場合、私の存在が亡かったことになる
引き継がない場合は優しいハンター達を元ある姿に戻し、サバイバーの皆を元あるべき場所にかえす

『背負ってる荷物が重くて潰れそう』

破滅に向かって進むしか無いのだろうか
いつ消える、戻る恐怖におびえさせたくない。

でも、存在を犠牲にしたくはない。
こんな人間でも、存在したことを誰かに憶えてて居て欲しいのだ。

私一人の存在を犠牲に皆の居場所を守れて
かつ、皆が幸せになれるかもしれない可能性を秘めている

でも

『私はどうしたら良いかわからない』

デメリットを
最悪の結果を、私は恐れている

『幸せになれそうなのに、でも、みんなをすてたくない』

重たすぎるんだ。

ハスターは静かに話しを聞いていた