【歌い手】3人4脚は難しい。

じゅうご ページ16

「どれくらい弾けるのか分からないから、とりあえず弾いてみてくれない？何でもいいよ」


そう言って私は先程天月さんが用意してくれた椅子に腰かける。天月さんは__んー、__と顎に手を当てて考える仕草をした。が、すぐに鍵盤に手を置き、弾き始めた。


この曲はぱすからーの『かーにばる』だ。ライブでは既に定番曲となっているこの曲。ノリが良い曲で、お客さんだけでなく、パフォーマーも声を出さなければ成り立たないのが『かーにばる』。もちろん、振り付けもある。


そんな『かーにばる』は、キーボードを初めて約10年経つ私でさえも難しかった譜面。それを難なくこなす天月さんに目を見開くしかない。


ジャン！と曲が終わり、__どう！？__とキラキラした目でこちらを見る天月さん。どうも何も完璧すぎて言うことなしです。


「凄かった！私よりも…」


「いやいやそんなことないよ！僕はAさんが奏でる優しい音の出し方を教えて欲しいんだ」


優しい音の出し方、なんて言ったって天月さんはそれもマスターしてるじゃないか。逆に私が教えて欲しいくらいだ。


「でも本当に言うことなしだよ。何を教えたらいいんだろ…」


どうしようかなぁ、と考えているとふいに天月さんが口を開いた。


「ぱすからーの譜面は一通り練習したから出来るんだ」


ハッと譜面を見ると、ぱすからーの譜面の冊子はボロボロで、努力の結晶が目に見える。


「でも僕はもっともっと色んな曲が弾きたい！Aさんみたいな音で」


私みたいな音＿＿＿＿＿？

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