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Aside
あの日からも須貝さんは何も変わらず。
私の方はというと完全に須貝さんを避けてしまっている。
と言っても家に住まわせてもらっているし礼を尽くすべく家事全般は請け負っているし必要な会話は毎日しているけれど。
須貝さんの言葉。
気付いたら好きになってる。
そんな恐ろしいことがあっていいの?
不可抗力のような感情でお母さんはあんなに苦しんだの?
私は、絶対、嫌だ。
逃げたっていいじゃないか。
悪いことなんてしていない。
「おもち、おもちだけが好きじゃ、だめなの?」
床に寝そべっておもちを抱き寄せると顔をペロペロと舐めてくれた。
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高田「好きという感情の自認、ですか。」
「はい。人間はどのように好きという感情を認識するのかなと思いまして。教授には奥様がいらっしゃるので教えていただければと思い・・・」
高田「・・・」
教授でさえここまで言葉に詰まるなんて。
高田「寝ている姿を、」
「はい。」
高田「ソファで寝ている妻の姿を見て、ブランケットをかけてあげたいと思ったと同時に、彼女の頰に手を添えたいと思った時、ですかね。」
「手を添えたい?」
高田「はい。人間は好意を抱いている相手の肌に触れたい、鼓動を感じたいと思う習性があるのではないでしょうか。専門は生物ではありませんので確証はありませんが。」
肌に、触れたい。
鼓動を感じたい。
だから手を繋ぎたいと思ったのか。
「腑に落ちました。ありがとうございます。」
高田「それはなにより。検証もうまくいったようで、これで論文に取り掛かれますね。」
「はい。結果をまとめ次第作成に取り掛かります。」
高田「倉科さん。」
「はい。」
高田「加藤教授のところの彼は、研究者としても、1人の人間としても信頼のおける人物だと思いますよ。」
「・・・どうしてそう思われるんですか。」
高田「熱で意識が朦朧としている慕っている女性の家に行って、何もしないのは本当に大切に思っているかそういった行為に興味がないかだからです。」
・・・教授が研究内容以外で褒めるなんて珍しい。
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作者名:たらこ | 作成日時:2021年4月15日 20時