帯に短し襷に長し

4 ページ4

fkr「A」

？！？！
私の、こと。

kwmr「うん？」

fkr「そろそろ言わなきゃなんだよね。」

kwmr「さっさと言えよ、僕は最初からどうかと思うって言ってただろ。」

fkr「乾に続いてノブも演者になってるから人手がさ。あそこまで酷いとは思わなかったんだよ。文字起こしもそうだし切らないでほしいポイントカットしてるし。お願いした動画、やり直さなきゃ。」

kwmr「どうするつもり？」

fkr「困ったよね・・・どうしようかな。」

・・・困らせている。
ほんとはクビにしたいけど一回採用しちゃったらなかなかできないから、困ってる。
憧れの人の、足手まといになってる。

「・・・あ、あの。」

fkr「ああ、A、なに？」

・・・驚きもしないのか。
ああ、好都合なんだ、聞こえてたなら辞めてくれるよねってことなの、かな。

「今、今まで、お世話になり、ました。お役に立てずに申し訳、ございませんでした！」

fkr「は？」

「え、えっと、退職の手続き等々はまた来ます、お先に失礼しますっ！」

fkr「え、A・・・A？・・・っ違う！待って！」

もう一度オフィスのフロアから1階まで駆け下りた。
立つ鳥跡を濁さずで戻ったのに、ほんとに立つ鳥になってしまった。
・・・もう、動画の編集、頑張ることすら出来なくなってしまった。

暑さなんてどうでもいいと日傘も差さずに駅まで向かい電車に乗って家に帰ると、家に着いた頃には須貝さんがくれたアポロは溶けてねちょっとしていた。
まだつけたばかりでクーラーが効いていない部屋に座っておもむろにパソコンを開き、退職届の書き方を検索した。

大学の前期試験が終われば夏休みだというのに。
バイト先を失くした私の来月以降の予定は真っ白。

「・・・家庭教師でも、するかな。」

数日後大学に行く前にオフィスに立ち寄ってその場にいた社員さんに退職届を渡した。
フリーアドレスでデスクもない会社なので片付けるような私物もなく、5分も経たずにオフィスを出ると今日も炎天下、厳しい日差しが肌を射してきた。

いつかYouTubeでQuizKnockをまた見ることが出来るだろうか。
憧れだけの存在ならまだ良かったのに。

怒られても笑いかけられなくても、なぜか好きだと思ってしまった。

とにかくまずは前期試験。
試験勉強に集中して頭から今日あった出来事を消し込みにいった。

to be continued

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す