帯に短し襷に長し

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須貝に腕を引かれて昔よく遊んだ公園のベンチに腰掛けた。


sgi「いや・・・聞いていいもんなんか？辛いなら言わんでもええけどやな・・・」


腕を引いて連れてきた割にはものすごく気、遣ってくれるんだね。


「別に特別なことじゃないよ。職場の後輩妊娠させたから婚約破棄してくださいって言われただけ。プロポーズする時だって家のソファだったのに、高そうなホテルのカフェにわざわざ呼び出されて言われちゃった。」


sgi「言われちゃったって、されてること最低やぞ。」


「そうだねえ・・・全部、なくなっちゃった。仕事も、同じ職場だから辞めたし、同棲してたから家もない。30過ぎて職なし家なし恋人なし(笑)」


sgi「笑うな。」


「っっ、」


sgi「こういう時は泣いていい。こういう時こそ笑うとか、そんなん考えんでいい。」


あの時、彼の前では一粒も出なかった涙が、ポロポロ流れ出てきて止まらない。
須貝は何も見てないみたいに、近くのブランコに行って、昔と変わらない笑顔ですげえだろってものすごい勢いでブランコを漕いでいた。
数分後、自販機で買ったスポーツドリンクを手渡された。

sgi「塩分補給。Aコーヒー苦手だったろ。とりあえず飲んで落ち着け。そんで？これからどうすんの？」


「・・・ここに帰ったって、狭い世界だから婚約してるのも広まってるし、破棄されたなんて広まったら、ここにもいられない。」


sgi「じゃあ、ここも出てくの？また大阪？」


「・・・どうしよう、かなあ。大阪にあの人がいるって思ったら、大阪には戻りたくないし。」


sgi「・・・東京、来る？」


「・・・え、」


sgi「都会に出るなら東京。別に他が良いってなら止めんけど。それなりに職は探せるでしょ。」


「・・・行こうかな。」


sgi「部屋探しなら任せろ。あと、弁護士とかなら知り合いのツテ辿ってやるから。」


「どうしよう、かなあ。」


sgi「職場まで辞めることになったならそれなりにお金は貰わんと生きてけんやろ。慈悲かけたくなるほどまだ好きならしゃーないけど。」


「・・・ううん、それはない。お金請求してくるなんてって思われないかなって。」


sgi「思われても良くないか？あっちは婚約期間中に他の女と浮気して子供まで作っとるんやから。」


須貝のいう通りだ。
弁護士の件についても須貝にお願いすることになり、とりあえずお互いの家に帰ることになった。

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