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八泡。 ページ8

波のさざめく音に包まれる、とある海岸


“彼を迎えに行かなくちゃ”


呪いのように呟く

まるでそれだけが私の生きる価値のように


「.........待っていて、ピンガ。それなら、助けに行ってあげる.......」


私はドレスのまま海中スクーターを握って、海へと飛び込んだ



強い波の波動がこちらに押し寄せる

肺活量には自信があるが、人工エラとやらがないと流石に無理があっただろうか

1度水面に上がって、大きく息を吸ってまた飛び込んだ

呼吸をおちつける余裕なんてない

早く、急いで

私は彼に会わないと

彼を助けないと


「.........っ!!っごほ......っ...く...........っ!」


遠くに、ひとつの光を見つけた

スマホだろうか

その光で照らされた横顔は、記憶の中の物と相違ない

驚いて海水を飲んでしまった

急いで水面に上がるが、いてもたってもいられず、水を吐き出すのもそこそこに、また潜った

急いで、早く

また彼がいなくなっちゃう

あぁ、人魚のように自分で泳いでいけないのがもどかしい

海中スクーターはバッテリーを温存するために、電池を切ってしまった

お願い、私が彼を抱きしめるまで

時が止まっていてくれたら..........


「......っ!?」


私がふとピンガの目の前を見ると、黒い潜水艦があった

組織のものだろうか

ピンガはこの迎えを待っていたのかもしれない


......おかしい

人の気配がしない


ただの人間である私も、一応は組織の幹部

人間離れした部分はある

この無機物の固まりの中にも、人の気配が有れば分かるはず

それにピーピーと音が聞こえるし、水面に反射した潜水艦の頂点では赤いランプが光っている


あぁ、そっか

ピンガは騙されたのね

あれは組織の乗り物には必ずと言ってもいいほど組み込まれている自爆装置

きっとジンの仕業だわ......

きっと潜水艦のすぐ近くにいるピンガには死角になってランプが見えないのね


私は冷静に、海中スクーターの電源をつけてピンガの元へ向かった

こちらに気づいた彼が、目を見開く


......愛しすぎる人、貴方は騙されたわ

貴方が人を信じることで生きていたのなら、騙されて傷心の貴方を私が守ってあげるのに

きっと貴方は怒るのでしょう?騙されたことに

どうして貴方はそこまで強すぎてしまったの

九泡。→←七泡。



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設定タグ:名探偵コナン , 黒鉄の魚影 , ピンガ   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:夢二 | 作成日時:2023年5月27日 20時

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