私と貴方 ページ3
「Aさんってさ、よく周り見てますよね」
「今日、めちゃくちゃ助かりました。またよかったら一緒に遊びたいです」
大勢でのコラボ後、彼に言われた言葉。ううん、言われた言葉じゃない、彼から貰った言葉。
私は彼から貰う言葉を宝物みたいにずっと大切にしている。そしてその宝物は、どんどん増えていく。
この一つ目の宝物を貰った日が、私とばにらの初対面の時だった。
♦︎
「こないだの切り抜き見たよ」
『この間の切り抜きって…』
「だるさんが配信にきたやつ」
だるまが配信にきたやつ、彼はしょっちゅう私の配信に来るが切り抜きに上がっていたのは多分あれだ、ばにらの動画ばっかり見てるのがバレた配信だ…。
『え、あぁあれね！あ、えっと』
「それ見て俺もAさんとの初コラボの切り抜き見返したわ。懐かしい」
特に私がばにら関係の動画ばかり見ている事には触れてこなかった。少しだけ安心する。
あの配信の時は適当に誤魔化したけど、暇さえあれば私はばにらが出てる動画や配信を見ていた。なのでおすすめに彼関係が出てくるのは当然なのである。(もちろん他の人の動画も見るけどね？)
「なんかあっという間に仲良くなったよな」
『ね、ばにら、話しやすいし』
「それはこっちのセリフよ」
今は2人でvaloのコンペを回した後、配信終わりにただだらだらと話しをしているだけの時間だった。
このゆるやかな時間が私は大好きだった。
気を引き締めなくていい、配信者じゃなくて私が私としていられるこの時間。
「Aさんと話しとるとなんか落ち着くんよね。なんでやろ」
『…ほんと？』
「うん。居心地いいっていうか、なんやろ。話の終わりどきを見失うっていうか、」
このゆるやかな時間は今みたいなばにらの発言で少し歪む。
私の心臓が勝手にうるさくなるのだ。
……素直に、嬉しかった。
『私もばにらといると落ち着くよ』
落ち着く…し、ずっと一緒にいたいよ、とは言えない。
「はは、じゃあwinwinやね」
彼の優しい声が私の胸をくすぐる。
『winwinて、！でも確かにそうだね』
「いつもありがとうですよ。Aさん」
『なに改まって〜！こちらこそ、ありがとうだよ」
「俺がほっとできる唯一の居場所かも、Aさん」
また、私の心臓を高鳴らせる言葉を言う、ばにら。
そんなこと言われたら勘違いしちゃいそうになる。
『そ、う』
これ以上の言葉を私は言えなかった。
一歩踏み出す勇気が私にはまだない。
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作者名：こむぎこ | 作成日時：2023年8月9日 0時
