帰る日 ページ31
『…た、だいま、？』
なかなか針に入らない細い糸みたいな、そんな声で小さく呟く。
人の家に入る時は″ただいま″で合っているのだろうか。
久しぶりに踏み入れた彼の家。住み慣れていた筈のそこは、少し居なかっただけで、他人の家のような感じがした。(他人の家、なんだけど)
その証拠に以前は感じなかった彼、だるまの匂いが鼻にまとわりついてくる。
配信をしているであろう作業部屋の前をそろりと通り、リビングへと向かう。
『あれ、全然汚くない』
リビングは私が出ていった時のその状態のままだった。
その様子に少し拍子抜けしてしまう。
ゆっくりと荷物を片付けていく。
自分勝手なのは重々承知だ。どんな顔をしてだるまに会えばいいんだろう？なんて考えてみたけど、そもそも彼は私がありさかさんの家にいた事も、この家を出た理由も知らない。
だから、普段通りでいいんだ。
チラリとスマホを見れば、いつの間にかだるまの配信は終わっていた。
普段通り、普段通り、と心の中で何度も呟いて作業部屋へと足を向けた。
−−コンコン
『…だ、だるま』
ノックをして呼び掛けて見るが返事はなかった。
≪家に、います≫
本人にまだ″ただいま″を言う勇気が無くて、そんなLINEを彼に送る。
ふぅ、本日何度目かの大きな息を吐いた。
−−ガチャ、バンッ
『っい！』
勢いよく内側から開かれた扉は、私のおでこに直撃した。
『い、いてて。だるま、ひさし…』
額を右手でさすりながら少し目線を上げる。
彼の顔を見たかったのに、気がつけば左手を引かれていた。
目の前には、見慣れたパーカーの色。
頬に柔らかい生地が当たる。
「A、おかえり」
私はだるまの腕の中にいた。
『…だるま、ただいま』
ゆるゆるとだるまの背中に腕を伸ばし、力を込めた。
彼の家に帰った時の挨拶はどうやら、″ただいま″が正解のようだった。
ただいま、だるま
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黒灰白有無％(プロフ) - 1から拝読させて頂きました！！色々な意味で本当にどきどきさせられますし、展開も面白くとても楽しみで時間があっという間でした.素敵な作品を有難う御座います気が向いた時更新して頂けたら幸いです！無理せず自身のペースで頑張って下さい是からも応援しております！ (11月9日 0時) (
レス) @page33 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
もも - 素敵すぎる作品です。完結を心より楽しみにしています…！ (7月18日 4時) (レス) id: 46bcba6e95 (このIDを非表示/違反報告)
こむぎこ(プロフ) - 9日さん» 9日様〜！今年も宜しくお願いします💓9日様のそのお言葉のおかげで2023年も頑張れそうです🥹🫶いつも本当にありがとうございます！ (2023年1月30日 14時) (レス) id: 88751783dd (このIDを非表示/違反報告)
9日 - 更新久々だー！やっぱこむぎこさんの書く小説が1番好きです笑。これからも無理ない程度に更新していただけると幸いです💞 (2023年1月29日 0時) (レス) @page30 id: 5d21b82b77 (このIDを非表示/違反報告)
こむぎこ(プロフ) - 9日さん» 9日様〜！！亀更新ですみません😭！いつもありがとうございます（ ; ; ）！！これからも頑張ります💓 (2022年12月4日 0時) (レス) id: 88751783dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎこ | 作成日時：2022年7月25日 17時
