ダイブされた日 side:a ページ27
Aちゃんが来てから結構な日が経った。
相変わらず俺は配信をするし、彼女は仕事に行き、夜にはご飯を作ってくれる。
この緩やかな日常が続けばいいのに、と思う反面これだけ一緒にいても進まない俺たちの距離感が歯痒かった。
やっぱり俺はAちゃんにとって友人であり兄のような存在である事を思い知らされる。
ふと、俺の大切な友人であるだるまの事を思い出す。配信は一緒にしないが、喋る相手がいないからかよく裏でゲームはしていた。
俺にとって、だるまは大切な友人だ。彼のことを思えばそろそろ彼女をかえしたほうがいいとも思う。
『ありさかさ〜ん。ご飯食べる？』
ベッドで寝転がっているとキッチンにいたAちゃんが俺の方に近付いてきた。
「あー、食べよかなぁ」
『まだ眠い？』
俺の元まで来てふふ、と笑う彼女。Aちゃんの笑顔をこの距離で見れるのもあと少し。
『寝癖ついてる、…っきゃ、！」
「っわ！」
ぽすり、
「びっくりした、危ないなぁ」
『つまずいちゃった…』
俺に手を伸ばした彼女はバランスを崩し、そのままベッドの上にダイブ。正確にはベッドの上にいる俺にダイブ。
『ごめんね！』
俺を下敷きにしている彼女はそう言って上体を起こす。
その離れようとするAちゃんの頭を引き寄せてまた俺の胸元に押し付けた。
『ありさかさん？』
「聞こえる？俺の心臓の音」
『うん。どきどきしてる。ごめんね、びっくりさせちゃったよね』
俺のこの高鳴る鼓動は彼女にちゃんと届いているようだった。
Aちゃんが思ってる理由とは違うけど。
「Aちゃん、そろそろだるまのとこ帰んなよ」
『…うん』
Aちゃんの頭をいつものように優しく撫でる。
「あ、Aちゃんのことを迷惑って思ったからじゃないよ。だるまが寂しがっとると思うから」
『あはは、どうだろ』
Aちゃんの乾いた笑いが耳に響いた。
「Aちゃん、驚いたからじゃないよ」
『ん？』
「Aちゃんが近くにおるからだよ」
この胸の高鳴りは。
俺だけを見て、なんて言わないからだるま以外にも沢山いることを知って欲しい。Aちゃんを大切に想う人は何人もいる。
「俺のことも考えてみてね」
先日、帰せないなんて言ったけどやっぱりだるまの元に返すしかない。
返すというか、一度も俺のものになった時間なんてなかったんだけどね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 969人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「CR」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒灰白有無％(プロフ) - 1から拝読させて頂きました！！色々な意味で本当にどきどきさせられますし、展開も面白くとても楽しみで時間があっという間でした.素敵な作品を有難う御座います気が向いた時更新して頂けたら幸いです！無理せず自身のペースで頑張って下さい是からも応援しております！ (11月9日 0時) (
レス) @page33 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
もも - 素敵すぎる作品です。完結を心より楽しみにしています…！ (7月18日 4時) (レス) id: 46bcba6e95 (このIDを非表示/違反報告)
こむぎこ(プロフ) - 9日さん» 9日様〜！今年も宜しくお願いします💓9日様のそのお言葉のおかげで2023年も頑張れそうです🥹🫶いつも本当にありがとうございます！ (2023年1月30日 14時) (レス) id: 88751783dd (このIDを非表示/違反報告)
9日 - 更新久々だー！やっぱこむぎこさんの書く小説が1番好きです笑。これからも無理ない程度に更新していただけると幸いです💞 (2023年1月29日 0時) (レス) @page30 id: 5d21b82b77 (このIDを非表示/違反報告)
こむぎこ(プロフ) - 9日さん» 9日様〜！！亀更新ですみません😭！いつもありがとうございます（ ; ; ）！！これからも頑張ります💓 (2022年12月4日 0時) (レス) id: 88751783dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむぎこ | 作成日時：2022年7月25日 17時
