第4話『お願い事』 ページ5
「ノートを見せて欲しい?」
彼女のお願い事というのは、休んだ日の分のノートを見せて欲しいということだった。
お礼がそんなんでいいのか尋ねたが、コクコク頷いている。
...ちょっとだけ、距離を詰めてみてもいいだろうか。
「貸すのは勿論大丈夫なんだけど、この日の範囲ノート見るだけじゃ分かりにくいかも、」
彼女は 一瞬表情が曇るも、
『頑張ってみるね、』
すぐさま俺を心配させまいと言わんばかりの笑顔でそう言った、というより"笑顔を作った"という方が正しいだろうか。
なるほど、少しずつ彼女の性格が掴めてきた。
「大変だと思うし、もし良かったら俺、教えようか?」
ありがたいけど、そんなの忙しいだろうし大丈夫って断るんだろうな。
と思っていたら案の定それで。
「お礼もあるし、俺がしたいから、しないと気が済まないからそのくらいさせて?もし嫌だったら無理にとは言わないけど...」
この手の人は、こういった言い方に弱いのも知ってる。
彼女は最初少し驚いて、その後微笑んだ。
『正直、すごくありがたいです、よろしくお願いします、』
今度の笑顔は、作り物じゃないようだ。
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作者名:メチルオレンジ | 作成日時:2020年5月26日 12時