第28話『待人来ル』 ページ29
年末の日々は忙しなく過ぎた。
大晦日の夜、今年一年を振り返る。
でもやっぱり思い浮かんでくるのは縁下くんのことばかりで。
電話、してみてもいいかな…
でももう寝てるかもしれないし…
やめよう、うん、寝よう。
目を覚ましたら、年が明けていた。
スマホを見ると、沢山の友人たちからの"あけましておめでとう"のメッセージ。
目を通していると、また一つ通知音が鳴った。
縁下くんからだった。
"あけましておめでとう、早く会いたいなって思ってます。"
声が聞きたかった。
せっかく手段があるのに、勇気が足りないなんて理由で行動に移さないのは勿体ない。
RRRRRRRR───────
「Aさん、あけましておめでとう。どうしたの?」
素直になろう。これ今年の抱負。
『声が、聞きたくて』
「同じこと思ってた、」
『もし良かったら、初詣一緒に行きませんか…?』
こんなにいきなり言い出したわがままに付き合ってくれるところも、好きだ。
一緒にお参りして、一緒におみくじを引いて
一年の最初の日から一緒に過ごせることを、ただただ幸せに感じた。
『"待人来ル"だって』
「誰のこと待ってるの?」
『分かってるくせに』
一緒に笑い合って、休みの間何してるーとか話して、そんななんてことない事だって縁下くんと一緒ならどうしようもなく嬉しい。
「そのおみくじ、絶対当たるよ」
『縁下くんが言うなら、そうなんだろうね』
「俺のおみくじ、恋愛運すごい悪かったな」
『じゃあそのおみくじは絶対外れだ』
私が言うんだから間違いないでしょ?
『縁下くん、私の事好きになってもいいんですよ?』
「なってるよ、だいぶ前から。」
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作者名:メチルオレンジ | 作成日時:2020年5月26日 12時