第22話『行方不明』 ページ23
修学旅行に来た。修学旅行に来たはいいのだが、生憎今は修学旅行を呑気に楽しんでいる場合ではない。
Aさんが───────
「いなくなったァ!?!?!?」
電話越しの担任の声が響く。
「宿に戻ってるって訳でもないみたいですね。ありがとうございます。連絡がついたらまた掛けます。」
今日は修学旅行2日目の自由行動日。時刻は夕方。
心配そうにクラスの連絡網を当たってAさんを見た人はいないか班員総出で聞いて回っているものの、目撃者は一人もおらず。
「縁下、どうするよ?」
班員のひとりが尋ねる。
「俺はもうちょっと探そうと思う。もう宿での集合時間も近いから、みんなは戻ってて。」
みんなでバラバラになって探してもかえって危険だから。と説明して、先に帰ってもらった。
今朝先生の言っていた言葉が頭をよぎる。
「修学旅行生を狙ってくる悪質な人間もいるからな、充分気をつけろよー」
Aさんがもし不審者に連れていかれたりしていたらどうしよう、事故にあっていたらどうしよう、彼女に限って連絡がつかないなんて何かあったに違いない。
焦燥感と後悔と不安と、色んな感情がごちゃまぜになって、どうすればいいか分からない。
俺がもっとちゃんと見ていれば、落し物を届けると言って走り出した彼女について行ってあげてれば、
もしAさんに何かあったら、俺はどうすればいい…?
どこにいる?どうか電話に出てくれ。
そう願いながら、もう10回目を優に超える電話を掛ける。
RRRRRRRRRRRRRRRR
着信音は止まった。
「Aさん!?!?!?」
"もしもし、あの…"
「どなた、ですか…?」
電話に出たのは俺の聞きなれたあの透き通るような声ではなく、知らない男の声だった。
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作者名:メチルオレンジ | 作成日時:2020年5月26日 12時