第20話『最高気温』 ページ21
＜Aside>
びっくりした、なんて言葉じゃ表せないくらいの衝撃。
「好きだ」
隣の彼の表情を見れば、鈍感だとよく言われる私であってもそれがどういう意味の"好き"なのかを理解するには充分だった。
身体の温度が一気に上がった。
多分今、ここが他のどんな場所より暑い。
──────分からなかった。
なんて答えるべきなのか、私が彼に抱く感情は恋なのか、分からない。
ここでの模範解答は？
難しい。分からないのに分かってるふりをして答えるのは？いや、そんなの絶対ダメ。
考えて、考えて、もっと、頭、動け、、、
そう思えば思う程ますます答えから遠ざかって、
もっと分からなくなって、
頭が真っ白になって、、、
ごめん、こんなに君を困らせてしまう私で
本当に、、、
『ごめんなさい』
私は今、大好きな彼をいとも容易く傷つけた。
一瞬見えた彼の絶望した表情が脳裏に焼き付く。
胸が締め付けられる。
すぐに彼はいつもの顔に戻った。
「ごめん、なんとも思ってないやつにそんなこと言われても迷惑だよね。気にしないで、」
いつもみたいに優しく微笑んで、目的地のプールへと戻ろうとする。
迷惑だなんて、そんなわけない。
このままだと彼が離れていってしまいそうだ。
彼と出会ってから今まで、短い間だったにもかかわらずたくさんの幸せを貰った。今日だってそうだ。
初めての体験、初めての感情、どれもキラキラして、私の宝物だった。
いつの間にか私にとって欠かせない物になってた。
そんな日々が終わっちゃうなんてそんなの悲しすぎる。
『待って！』
お願い、どうか繋ぎ止めてくれ。
『まだ、好きとか分からなくて、自信もって答えられない…でも、』
今言える素直な言葉を一つ一つ絞り出す。
『気にしないでなんて言われても、絶対できないから、』
これが今の私の精一杯だから。
『だから、待っててくれませんか…？』
焦りと緊張で心臓がバクバクする。苦しい。
「ははっ」
彼の笑う声に、どっと力が抜けた。
「わかった、待ってる。」
良かった、ほんとに良かった、もう終わっちゃうかと思った、
「待ってるから、そんな泣きそうな顔しないで？」
私の方に伸びた手が、頭を撫でてくれる。
安心感で涙が出そうになった、けど、堪えた。
「じゃあ、戻ろっか。」
『うん！』
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作者名：メチルオレンジ | 作成日時：2020年5月26日 12時
