第17話『噂の彼女』 ページ18
｢プール清掃って俺たち3人だけでやるんですか？｣
日向はいかにもワクワクしているといった様子だ。
｢いや、俺ら3人と、あと俺のクラスの女子が1人いる｣
おぉ！女子！と2人して喜ぶ単純な奴ら。
｢てことは2年だろ？俺知ってるかな！｣
｢みんな知ってると思うよ｣
割と有名だからな、なんせ校内指折りの美少女だ。
『あ、縁下くん！』
手を振りながらこっちに向かってくる人影が目に入る。
｢クラスの女子って…｣
｢｢Aさんのことだったの！？｣｣
うわ〜っ初めてこんな近くで見た〜！とか言って喜んでる2人。やっぱり彼女の人気は凄くて、俺なんかが近づいてもいいものなのかと頻繁に思わされるものだ。
｢これが西谷、でこっちが後輩の日向。｣
紹介すると、彼女の顔がパッと明るくなる。
『2人ともよくお話聞いてます、会えて嬉しいです！』
おい、そこの2人はそんなに分かりやすくニマニマするな。
ところで一つ気になっていることがある。彼女はやけに荷物が少ない。
｢Aさん、もしかして制服のままやるつもり？｣
『着替え持ってくんのわすれちゃって…でもこのままでも大丈夫かな〜って？』
やっぱりか…俺が替えの体育着を貸してやることは可能だが、それって色々含みを持ってしまうよな？いやでもこいつら2人がいる時点で濡れないという保障は全くない。
｢制服濡れたらどうやって帰るつもり？俺のでかいかもしれないけど良かったらこれ貸すからさ、｣
お前ら、オカンって言ったの聞こえてるからな。
Aさんが着替え終わって更衣室から出てくると同時に、見慣れた坊主頭がものすごいスピードでこちらに走ってくる。まぁなんとなく予想はついていた、
｢縁下ァ！！！なんでAさんが居ると知りながら俺を呼ばなかった！！？｣
ものすごい形相で理不尽にキレられているが、ちょっと今はそれどころでは無い。Aさんが俺のブカブカなTシャツを着ているのだ、これはなかなかクるものがある。
｢田中、女子が誰か気になってずっとソワソワしてたぞーーー｣
｢ちょ、スガさん言わないでくださいよ！｣
後ろからぞろぞろバレー部のみんなが顔を出す。マネージャーも含めて、全員集合って感じか？
｢俺らも手伝うべ！｣
最初2人だけの小規模な予定だったが、現在もはやちょっとしたイベントのような空気になりつつある。
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作者名：メチルオレンジ | 作成日時：2020年5月26日 12時
