第13話『重なる影』 ページ14
「Aちゃん来てるよね?今どこいる?てか1人じゃないよね?!」
電話に出た途端、クラスメイトからの質問責めを食らっている。
『1人じゃないよ!』
「よかった!誰といる??」
『え、えっと…』
縁下くんが口パクでなにかを伝えようとしてる。
い、わ、ない、で?
なるほど!
『遅れちゃったけど、お兄ちゃんが送ってくれたの』
「そっかー!みんなAの浴衣姿楽しみにしてるから早くおいで!待ってるよ!」
さすが花火大会とあって、クラスメイトのテンションが上がっているのが電話越しでも伺えた。電話を切ってふぅ、と一息ついた。
「みんなAさん待ってるって、行こうか。」
「…もうちょっと独り占めしてたかったけど」
それって、どういう意味…?
『そんな事言わないで、勘違いしちゃうよ』
「ごめん、かわいくてつい」
見覚えのある人影が近づいて来た。みんなだ…!
「あれ?A、縁下と一緒だったの!?」
「付き合ってんの!?」
「みんなのAさんが…!!」
会うなり質問責め再び。付き合ってるなんてそんなことないのに!困った…
「俺がAさんと付き合うなんて絶対あるわけないだろ、さっき偶然会ったから一緒にきただけ。ほら、分かったらAさんから離れろお前ら。」
そうだよね、あるわけない。今はあるわけなくても、そんなに否定しなくてもいいのに…なんて。
「ごめん、俺なんかと付き合ってるなんて冷やかされるの嫌だよね」
『こちらこそごめんね』
「いや、俺は寧ろ願ったり叶ったりというか…?」
またそうやってからかってるんだろうな。
「なんでもない、Aさんはクラスの誇る美少女だから、そういう話あるとみんなすごい騒ぐんだよ。」
『そんなことないけど…今日のことはみんなに内緒?』
「うん、2人だけの秘密」
"2人だけの秘密"
その特別な響きに少しワクワクして、今日の縁下くんを独り占めできたと思えばうれしくて
『また見たいね、花火』
「来年も一緒にいく?」
『行けるかなぁ、行けるといいな』
屋台の灯りがつくる2つの影は、ぐっと近くなった。
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作者名:メチルオレンジ | 作成日時:2020年5月26日 12時