＜×××＞ ページ8
｢彼女の貧相っぷりは相変わらずで、服装なんて簡素な薄いワンピースのみ。私の街の立派な図書館にはそぐわなくて、私はどうしてもその子が気になりまして。本を読みながら、時折その子が何をしているのか見ていました。
彼女は暫く本棚を眺めていましたが、ふと何かを手に取って、その表紙をじっと眺めていたんです。表紙だけを、じーっと。
変ですよね。本って中身が大事やないですか。それに、その小説の表紙が特別綺麗って訳でもない。私は思わず席を立って、声を掛けちゃったんです。
｢何してるんですか｣
って。｣
エーミールは懐かしむように目を細めた。ゾムはその顔を、向かいの席から見つめていた。
｢彼女は吃驚したようで、本を床に落としてしまいました。私も虐めてくるんじゃないかと思ったんでしょうね。直ぐに逃げようとしたんですけど、私が慌てて引き止めて。虐めるつもりはありませんよって事を伝えたんです。
そしたら彼女、まだ怯えた目で、落とした本を拾って呟いたんです。
『私、字が読めないから』
今度は私が驚かされましたよ。その女の子は見た目的に12歳程。もう読み書きくらい簡単に出来てもいい年頃なのに、そんな切なげに言うものですから。まぁ家の事情で、まともな教育を受けることが難しかったんだと思います。
それで私が、それならどうして本なんて読みに来たのかと訊ねると、彼女はまた、小さな声で自信なさげに
『本を読めるようになりたいから』
って、はっきりそう言ったんです。
その時に私は決めました。この子に字を教えよう、そうして沢山の本を読めるようになってもらおうって。｣
エーミールはそこまで言うと、紅茶を1口飲んだ。ゾムもそれに続いて飲み、ふっと息をつく。
｢大丈夫ですか？かなりスローペースにお話してしまいましたが。結構序盤ですけど。｣
｢ん、大丈夫やで。エミさん喋んの上手いわ。｣
｢え、ほんまですか？｣
｢うん。なんか、そういう職業とかやったん？｣
｢また後で話しますけどね。教授をやってますよ。｣
｢だからか。なんか人に教えんの上手そうやもんな。｣
｢おぉ…。何かあれですね、改めて聞くとちょっと嬉しいですね。｣
｢調子こいたらあかんで？｣
｢こ、こいてませんよ？｣
2人で少し談笑しながら、紅茶を嗜む。ゾムが飲み干したのを見て、エーミールが微笑んだ。
｢どうします、他に何か飲み物いりますか？｣
｢あー…んじゃ、お代わりもらってええ？｣
｢はい。｣
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ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
