＜9人目＞ ページ43
｢…こんなに話すつもりじゃなかったのに、改めて話してみると身の上話って長くなってしまうもんなんやな。｣
ふと時計を見上げた鬱先生が、意外そうに目を丸くしながら言った。
｢へぇ…大先生もそんな過去があってんな。｣
｢そ。俺にも色々あった訳よ。｣
｢んー。他の奴らからの話聞いてるとただ金と女に目がない屑野郎やねんけどな。色々あってんな。｣
｢否定しきれないのが悔しいなちくしょう。｣
くくく、とゾムが笑うと、鬱先生は欠伸をしながら言う。
｢ふあ…んで、ええ事って何？俺に教えてくれる言うたやんか。｣
｢ん？あー、そうやったな。｣
ゾムはニヤッと笑いながら言った。
｢さっき俺が追加って言ってたあの書類な、俺が大先生に押し付けようとした俺の書類やで。｣
｢………はぁ！？｣
｢大先生ほんまに気付かんもんなww｣
｢え、じゃああれやらんでええんやな！？｣
｢ええよもう。だって今から頼んでやってくれんの？｣
｢やる訳ないやろ！なあ、嫌な予感すんねんけど、もしかして今までもこのルートで俺に上乗せしてた？｣
｢おん。｣
｢はー…。｣
鬱先生はぐったりとソファーに寄りかかり、重力に潰されるがままに寝転んだ。
｢なんや仕事多いし見た事ないやつあるなって思っとったら…やっぱあれ俺のちゃうやんか…。俺が何回トンちにどやされたと思ってんねん。｣
｢本当になんも気付かんかったよな。まぁ自分の仕事の管理が出来てへんかったって事で大先生が悪いな！｣
｢喧しいわ。｣
｢くははははww｣
ゾムは笑いながら書類をひっつかむと、ぐーっと伸びをした。
｢さーて、お暇しよかな！ここに居るの不愉快やし、煙くて。｣
｢部屋の煙草の臭いまではどうにもならんねん、勘弁して。｣
｢もう来んわ。じゃ。｣
｢はあい。｣
鬱先生の部屋から出たゾムは自室に戻った。書類の提出期限は変更されない為、仕方なく素直に書類仕事に向き合おうと思ったのである。
｢さーて、夕飯までには終わるといいな。｣
夕日が傾き始め、窓から血のように真っ赤な光が入り込む。電気も付けない暗い部屋の中で、ゾムは書類をとんとんっと纏めた。
｢終わった…！早よ飯食お。｣
書類を片手に、食堂までお腹を摩りながら行けば、食堂はいつもと変わらない賑わいを見せていた。遠目に今日の料理を確認したゾムは素早くおかずをとり、席に着いた。そんな彼に、特徴的に賑やかな声の男が声を掛ける。
｢おーゾム！お疲れ様やな！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
