＜×××＞ ページ24
｢そっから神父とシスターの苦労を経て1年、俺はなんとか人間に慣れて、そこから言葉を覚えたり、読み書きを習ったり、マナーを教わったりした。
幸い俺は覚えが早いみたいで、話し言葉を直ぐに覚えてからは読み書きもめきめき上達させて、7歳くらいの時にはもう、そこらのガキと変わらんようになっとったんやと。
凄ないか？たった4年で野犬を人間にしたようなもんやで？俺やって多分頑張ったんやろけど、そう教育できた教会の奴らって凄いよな。シスターは愛の力、なんて言って笑っとったけどさ。きっと悩みに悩んで、努力に努力を重ねて、何とか俺を人間にしてくれたんやろなぁ。
で、俺を育ててくれたのは神父とシスターだけやなかった。そう、赤ん坊の俺の面倒を見てくれた犬もや。あいつはほんまに気の利く奴でさ、俺が人間に慣れるまでは会いにこんかったけど、人間としての生活を始めたら、毎日遊びに来てくれるようになった。
俺はあいつと色んなとこを駆け回って遊んだ。やから体力も人並みかそれ以上はついた。それに、あいつは自然の知識をちょっとだけ俺に教えてくれたから、今こうして色んなとこ転々とする時に役立つ情報も身についた。
俺は幸せやった。捨て子なんて事情関係ないくらい。俺を人間として見てくれて、俺の未来を考えて基礎能力を身につけさせてくれた奴とか、俺の命を救ってくれて、俺のことを考えてくれて、俺と一緒に暮らしてくれる奴に囲まれてた。これ以上の幸せないと思った。
なのに、さ。｣
兄さんの深い藤色の瞳に、暗雲のような影がたつ。
｢戦争って、ほんまに一瞬で全てを奪っていくよな。俺を育てた街も、人も、あいつも、全てが戦火に飲み込まれて、俺は頭が真っ白になった。確か18歳の時や。
その頃は働く事が楽しくなって、ついに1人前として街を出るのもありやな、なんて考えとってさ。神父やシスターと話して、ちょっと遠くの大きな街に行って仕事を探そうと思ってて。そんなこんなで、俺はその日も、ちょうど仕事から帰って来た時やった。
教会は、俺の目の前で炎に包まれ崩れ落ちた。俺はそれをただ呆然と見てるだけやった。けど、中に神父とシスターがいるのを思い出して、俺は無謀にもその中に飛び込もうとしたんや。
そんな時も…あいつが俺を止めてくれた。
俺の服を引っ張って、無理矢理俺を逃げさせてくれた。しかも、避難経路もあいつは示してくれたんや。
…俺に構わず逃げとったら、あいつは死なんかったんかな。｣
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ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
