＜Ni-san’s Memory＞ ページ23
｢まぁ…俺は捨て子やってんけどさ。だから、親がどんな奴なんかも知らんかった。時々親ってどんな存在なんやろって思う事はあったけど、知らん存在を恨みつけるような無駄な真似はしようと思わんかったし、捨てられた事にもあまり悲しさとかはなかったなぁ。
親がいない俺は、吃驚されるかもしれんけど、ワンコに育てられてん。｣
｢わ、ワンコ？｣
ゾムが目をぱちくりさせながら聞き返すと、兄さんは楽しそうに笑った。
｢そ、ワンコ。犬や犬。俺の育ての親は、7割…いや、8割犬って言うても過言とちゃうね。｣
｢ようここまで立派な人間になったな。｣
｢…生まれは人間やからな？決して俺が犬から人間なった訳ちゃうからな？｣
｢分かっとる分かっとるw｣
兄さんは厨房の奥で皿洗いに忙しそうなおばちゃんの姿をぼんやり見ながら話す。
｢その犬も、俺が人間の子であることをよく分かっとったらしいな。俺の腹が減ったら、生ゴミの中から食べられるもん引っ張り出してさ。人間の残飯なら俺が食える、そして最低限育つ事が出来ると理解しとったらしい。ほんま、犬畜生とか言われとるけど、馬鹿にできひんよな。俺からしたら、俺を捨てた親よりよっぽど情と常識があったわ。
そんなこんなで、俺は3歳くらいまでは犬に育てられて、その後近くの教会に拾われた。最初は皆吃驚したらしい。俺は犬に育てられたせいで生き延びとったけど、その振る舞いは完全に犬だったんだと。
四つん這いで走り回っては威嚇して唸るし、ご飯なんて手も使わず直でがつがつ食うし、何しろ人間と馴れ合ってへんかったから、いつだって人間に脅えて、懐かへんかったんやって。
異様の一言に尽きる、って言われたけど、考えてみればそうやろな。見た目は完全なる人間の子供なのに、まるで野犬のような態度やってんから。｣
兄さんは楽しそうに笑って、それから天井を仰いだ。
｢そっから俺は、人間としての教育をされた。教会の神父もシスターも、優しくて根気強くてな。俺がどんだけ抵抗して、暴れて、噛み付いたり引っ掻いたりしても、俺が人間である事を考えて育ててくれてん。
『これから人間として生きていくために、今無理にでも人間の文化を身につけなければならない』
ってな。だから、今こうして俺は、見た目通りの人間として生きてる訳やねんけど。｣
ゾムは、遠い目をする兄さんの綺麗な横顔を少し眺めながら、落ち着いた兄さんの声に耳を傾け続けた。
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ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
