＜×××＞ ページ14
｢戦争はまだ続いてた。俺らの町は俺らの国の軍に目を付けられて、兵士の休憩地点や怪我人の待避所とされた。
それは、俺らの功績が認められたとも言えるし、多くの人を救えたっていう事実でもある。でもな、俺は嫌やった。だって…だってそれは、危険を迎え入れるようなもんやろ？
ただでさえ多くの被害を受けた俺らの町に、武力を持った奴ら、しかもその負傷者が来んねんで。それを狙う奴らがこの町に来てまう可能性だって十分にある。有り余る。
もうこれ以上、俺は誰も傷ついて欲しくなかった。敵だろうが味方だろうが。町の人は勿論、母さんにだって。でも、母さんはいつもと同じように笑って言うんや。
『やっと診療所の医師として、色んな方の命を救えるんやから、私がやらんで誰がやるの？』
『私は大丈夫だから。それよりも、救える命を救いたいやろ？』
悔しいけど、その姿は誰よりも全てを考えてて、誰よりも立派な医師やった。俺が目指すべき、憧れの医師の姿やった。
だから、俺も全力で手伝って、能力も精一杯使って、それまでの倍も働いて、次々に運ばれてくる怪我人の治療をした。忙しくなればなるほど俺は不安になったけど、飛ぶように動く母さんの背中を見ながら、必死に手を貸して、皆を助けようとした。
でも、神様がおるんやったらいじわるやな。俺の嫌な予感は当たってしまった。｣
しんぺい神は立ち上がって、デスクの上にあった機械で珈琲を入れた。ゾムにも勧めるが、ゾムは首を振った。昼食後で別に喉も渇いていないのだろう。また椅子に戻ってきた彼は、ゆっくりと味わうように珈琲を飲んだ。ゾムは何となく、その珈琲がとても苦いか、若しくは不味いんじゃないかと思った。しんぺい神の顔が、随分と曇っていたからである。
｢俺の母さんは、負傷した自国の敵兵を尾行してきた敵兵に襲われた。駐屯しとった兵士も気が抜けててな。あっさりと敵兵は侵入してきた。
俺は夕方、使った包帯を洗ってくると言って消えた母さんが心配で、母さんを探したんや。
そしたら…。｣
ゾムは俯いたしんぺい神の顔を少し覗き込んだ。すると、彼はほんのりと、苦笑のように見える笑いを顔に貼り付けていた。
｢母さんって、ホンマに馬鹿やなってそん時思ったわ。こっちは寿命の縮む思いで必死に母さんを探して、でも何処にも居らんくて、最後に入り込んだのは森の中。そんなとこで母さんは…
襲ってきた敵兵の手当なんて、しとってんもん。｣
＜×××＞→←＜Shinpei-Shin’s Memory＞
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ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
