＜×××＞ ページ11
｢色々な所を放浪しては、沢山の理由で教育を受けられない方達のために授業をして渡り歩きました。勿論授業料は無償で。
文字や計算の仕方を教えると、誰でも例外なく笑って感謝してくれて…その度に私は救われるような思いでした。
けれど、駄目なんです。私はもう、大切な方が亡くなられるのを指を咥えて見ていたくないんです。だから、軍の訓練に参加できるような国がないかを点々としてました。
そんな時に、フューラー帝国に訪れました。｣
ゾムが少しだけエーミールの顔を覗く。エーミールは穏やかな顔をしていた。
｢建国したばかりで、まだまだ国の状態も整っていなかった。なので私は、ここからスタートするのが丁度いいのではないかと思って、小さな学び舎のようなものを、ここに建てたんです。自営業ですし、そんなに規模が大きなものは出来ませんでしたが…。
この国には難民として流れてきた人が沢山いましたので、その中で人を集って、毎日3時間程度の授業をしてました。
そんな中、多分噂で聞かれたのでしょうね。ある日突然、グルッペンさんが直々にいらっしゃったんですよ。｣
エーミールはふっと笑った。
｢正直言えば、怖いなんてもんじゃありませんでしたよ。教室にいた子供は泣き出すし、相手はこの国の総統閣下。しかも書記長のトントンさんと、参謀長のオスマンさんまで並んできたのですから、私はてっきり潰されるのかと思いました。｣
ゾムはグルッペンの顔とその教室の阿鼻叫喚っぷりを思い描いて、｢ぶっ！！｣と吹き出した。
｢けれど、グルッペンさんは私の行いを素晴らしいと言って、建物や設備を負担してくださったんです。大々的に宣伝もしていただいて、お陰で色んな方達に授業を受けていただけるようになりました。
しかも、資料管理の職を頼みたいとの事で、私なんかを幹部に選んでくださったんです。私としては、戦闘訓練に参加したかったので万々歳でした。｣
｢エミさんがここにおるのは、それが理由なん？｣
ゾムが聞くと、エーミールは笑った。
｢まぁ、そうなんですけどね。本当は、グルッペンさんの言葉を聞いたからなんですよ。今回の戦争でも言っていたでしょう？
『戦争で命を落とさせない』
今でもそれは、私の一番の願いですから。｣
エーミールは寂しそうに微笑んだ。
｢それが私の全てですよ。｣
｢そっか。ありがとな、話してくれて。｣
｢いえいえ、長くなってしまってすみません。｣
ゾムは紅茶の最後の一口を、飲み終えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽいぽい(プロフ) - 雨の止まない街さん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした！温かいコメントに元気出ました！ありがとうございます！ (2019年12月17日 12時) (
レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
雨の止まない街(プロフ) - 初めまして。数週間前に本編一気読みした者です。率直に言うと大好きです。更新は無理のないようにして下さい。陰ながら応援しています！ (2019年12月17日 11時) (レス) id: 73a1ddffb6 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 紫陽花さん» ありがとうございます！更新少しローペースですが、楽しんで貰えれば幸いです。 (2019年10月24日 19時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - めっちゃ好きです。もう言葉に表せないくらい。頑張ってください！ (2019年10月24日 17時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - 納豆の化身さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます！多分更新またサボります(あれ？？？)けど、これからも温かい目で見てやって下さると光栄です。 (2019年10月17日 23時) (レス) id: 05af6d92c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽいぽい | 作成日時：2019年10月16日 8時
