月島くん、女子の手作りお菓子をなんだと思ってるんですか！？

22話 姉と私 ページ24

貴「っ...来てたんだ。久しぶり...」

姉「しばらく見ないうちにまたでっかくなったか？」

貴「...3センチ伸びたよ」

姉「へぇ、脚の方はどうだ？」

貴「...うん、まあまあ...かな」


幼い頃に離婚した両親

父方に付いた姉とはたまに会ったりはしていたが

...どうも慣れない

2歳上の姉

スラリと伸びた肢体に少年のようなあどけなさの残る顔立ち。それでも美人の部類に入る

髪も短く口調も少年っぽい

白鳥沢高校女子バレー部で

セッターをやっている

好物は棒付きキャンディー

...これくらいしか知ってることもない

私には似てないし、身長も同じくらい


...昔、私と姉はバレーをやっていて、とても仲が良かった

姉は天才セッターと言われるほどの技術者だったし

私もそこそこいいスパイカーだったんだけど

姉を慕うある人の嫉妬により

私の脚は壊された


姉はこのことを知らない

ただ使いものにならなくなった、という認識だ


いつか、一緒にバレーの大きな大会に出るというのが姉と私の夢だった

本当のことを言ったら姉はずっと自分を責め続けてしまうだろう

それは避けたい

そして、私の中に少しだけ姉を恨む気持ちがあるのも事実

だから、私と姉の関係も、良くはない

お互い、なんていうか、一線引いてしまうから


姉「...学校楽しいか？」

貴「...うん。」

姉「それは良かった。パリにいた頃は日本に帰りたいとホームシックだったんだろう？」

貴「...お母さんから聞いたの？」

姉「はは、まぁ元気そうで良かったよ。来たかいがあった。」

貴「...ケーキ、食べてくの？」

姉「いや、今は調整が必要だから。また今度いただくよ」

貴「...そう」

姉「Aのケーキはうちの高校でも人気でね。耳に入ってくるんだ。」


Aはすごいな、と笑う姉


...姉は知らない

私がなぜケーキやお菓子を作り始めたのか

お菓子が好きだから、とかじゃない


『足がダメなら手を動かせ』


脚が使えなくなり絶望していた私に姉はこう言い放った

手を使ってできること

私が思いついたのは甘党な姉にお菓子を作ることだった

全部、姉のため

大好きな姉のために私はお菓子作りを勉強したし、喜んで貰いたくて留学までして本格的に完璧を目指した

...だけど

やっぱり、溝は埋まらなくて


姉「今日はもうお暇するよ。じゃあまたな」

貴「うん...またね」


棒付きキャンディーを咥えて店を出た姉の後ろ姿は

どんどん遠ざかって

どうしようもなく、切なくなった

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