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"もっと飲めよ〜!"


荒々しい声が居酒屋に響き渡る。

お酒が全然進んでいない私を見計らって
前に座っていたはずの北山先輩が隣に詰め寄ってきて
肩を組んできた。

北「ん〜?どした〜、朝霧Aちゃん。
お酒弱い〜?」


「…の、のみますっ」


ノリが悪いと先輩にも良くないと思い、
苦手であるその場の雰囲気で頼んだビールを持つ。

全く飲んでいないせいか、グラスは水滴でびっしり濡れていた。



舌が子供なのか、いまいちのどごしがいいとやらが分からない。
嬉しそうに見つめる先輩の横で
曇った顔つきに愛想笑いを交わした。



北「そうでなくっちゃ〜
やっぱり仕事終わった後の酒は美味いなっ

お疲れ様」

そう言って私の頭に先輩の大きな手が乗る。
くしゃくしゃされて頭を揺らされた。

先輩が席に戻ったタイミングで、
髪の毛を整えようと俯いていた顔を上げると
周りの女性たちは私に冷たい視線を送っていた。

そりゃ…そうか。


北山先輩は人気で、
この飲み会も、顔と名前を覚えてもらおうとアピールしている女性がいるのに
何もしていない私なんかがこんなことされちゃって…

その視線が痛くて
「トイレ行ってきます」と、その場を去った。



慣れていないビールを一気に飲んだせいで
少し視界がぐらつく。

思い通りに足も動かなかった。



「「ありがとうございやしたぁぁ!」」


居酒屋の店主が大声を出す。

昔から人混みやにぎやかな場所が苦手。




居酒屋の外に出れば
何かの焼き立ての匂いや、独特なアルコールの匂い。

そして店内と比べると静かで
一人になった瞬間にどっと力が抜けた。


夜風に当たると気持ちよくて
大きく背伸びをした。

吐いた息からアルコールが香る。




残っている仕事を片付けた残業組で飲みに行こうという
突拍子もない北山先輩の提案に
尻尾を振って喜ぶ女の子や気晴らししたいという男性陣。
そして本当は断りたいけど、断れなかった私や…、


ガラガラッ______________



後ろのドアベルが鳴り、
振り返れば











さっき冷たい視線を送っていた一人、佐々木先輩だった。

私はとりあえずお辞儀をする。

何を言うわけでもなく、先輩は私の隣に立ち
ポケットから煙草を取り出した。


「っ・・・」









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裕太 - このみ (2021年8月9日 13時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
かな - こんにちは!私涼風さんの作品大好きで、載せてある作品も全部拝見したことがあります!衝撃でしたが納得です。笑ここまで飲み込まれる作品、素敵だなと思っていたので!これからも応援しています! (2021年7月22日 16時) (レス) id: 0aabf425eb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう更新はないのかなって思ってたから本当に嬉しいです…。しかもあんな玉森先輩の呼び捨てとか不意に出るタメ口が好きすぎます!!これからもゆっくりでいいので更新待ってます。 (2021年7月22日 15時) (レス) id: 16253f3e09 (このIDを非表示/違反報告)
000(プロフ) - さつきさん» そう言ってもらえて凄く嬉しいです。ありがとうございます! (2021年5月23日 21時) (レス) id: 93533482e6 (このIDを非表示/違反報告)
さつき - 面白いです!続きが気になる!! (2021年5月20日 0時) (レス) id: 16253f3e09 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:000 | 作成日時:2021年5月19日 19時

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