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お前の身長私に寄越せ ページ34

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予想通り車内はキツキツだった。

助手席に顎髭さんが乗り、後部座席にニット帽さんが座ったのだが如何せん狭い。シートは4人分あるが、後部座席に人をのせることなんて今まで無かった。見た目と速さを重視して買った車だから、大人数を乗せることに慣れていないのだ。


「すみません、何分後部座席に人を乗せることに慣れていないものでして…」
「いや、いい。俺が着いていくと言ったのだから気にするな。」


ニット帽さんは現在胡座をかいて席に座っている。足が長すぎてまもとに座ることができないからだ。私の身長は164cmだが、ニット帽さんの身長は180cmはゆうに超えている。真面目に席の間に足が入らない。顎髭さんも苦笑いだった。


「えと、目的地は××にあるホテルなんですけど…」
「あぁ、そこならここからそんなに遠くないな。まずはそこの通りを右に曲がって、」


顎髭さんの指示を聞きながらハンドルを操作する。まぁ、目的地のホテルの場所なんて普通に知ってるんですけどね。

此処らへんの地理がわからないから、知っている場所を目的地としたのだ。ついでに兄さんには2人をそこへ連れて行くことはメールで送信済み。ホテルの地下駐車場なら、人目もないし兄さんに2人を楽に引き継げると思ったからだ。

人気も少ない道路を走っていれば、無事目的地に着いた。


「道案内ありがとうございました。お礼をしたいので、もう少し車で待って頂けますか?」
「あぁ、わかった。」


駐車場の端に車を止めて、次兄が来るのを待つ。後数分で着くとメールで来たからもうすぐだろう。

さっさと2人を兄さんに引き渡して、家に帰りたいなぁ、なんて考えていると、ニット帽さんが重く冷たい銃口が頭に押し当てた。


「ライ!?何をして、」
「えーと、どういうことでしょうか。」
「君は一体何者だ。組織の差金か?」


顎髭さんはニット帽さんの行動に驚いていた。私も普通に驚きなんだが。しかし、ニット帽さんから顎髭さんが銃を取り上げないあたり、この行動の意図を汲んでいるということなんだろうが。


「何者と言われましても、一般人ですが…」
「普通の一般人なら、銃を見せれば驚き恐怖を感じる。だが、君は驚くどころか冷静だ。銃を見慣れているんだろう。」
「見慣れてはいませんよ?ただ少しびっくりしましたが。」
「信じられんな。」


ふっ、と笑いをこぼすニット帽さん。

兄さんから頼まれてあんたらを拾いに来たのに、この有様は一体何なんだ。

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作者名:ななを | 作成日時:2022年6月7日 21時

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