道案内をお願いします ページ33
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「兄さん、その2人私の目の前にいるんだけど。」
「なら話が早い。適当な理由でっちあげて車に押し込め。」
思わずハァン?と声を上げそうになった。この次兄は私に難題を押し付けようとしているのではないか。
私の予想だと、目の前のこの2人は何らかの組織の潜入捜査官だろう。公安が今大きな組織を追っているのは知っている。そこで何かやらかして、組織に追われていると考えればなんとなく辻褄が合う。夜にこんな人気がない廃ビル付近にいるのもそういうことなんだろうが。
彼らは公安の人間の可能性が高い。公安の潜入捜査官は単独行動が基本だ。そして人を簡単に信頼しない。
つまり、急に現れた私の言うことを聞いて、大人しく車に乗り込むことは有り得ない訳で。
はぁあ、と深い溜め息を吐いた。ちらりと、2人を見ればお互い何かを言い合っていた。その中に入っていくの面倒くさいな。特に顎髭さんの方は切羽詰まったような表情をしている。
「あのー、すみません。お話中のところ申し訳ないのですが、道案内をお願いしたいんです。」
「道案内、だと?」
ニット帽さんがこちらを見た。ついで顎髭さんもこちらに顔を向ける。
人を迎えに行くということはこの2人には知られている。だったら、此処で道に迷ったことにして2人を車に乗っけて兄さんのところへ運べば完璧。本当は力技で押し込みたいんだけど、穏便に済ましておきたい。今、私は一般人として此処にいるからね。
「そうです。想定した道とは違うみたいなので、案内してほしくて。」
「…ライ、一般人の前だ。ここは大人しくしよう。」
小声で言っているつもりなのだろう、顎髭さん。ばっちり聞こえます。
如何にも無害な一般人を装い、2人に近づいた。
「車に乗って道案内してもらえませんか?私、ここで教えられても覚えられる自信がなくて…」
「…わかった。俺が案内する。助手席でもいいか?」
「えぇ、お願いします。…そこの長髪ニット帽さんは一緒じゃなくていいんでしょうか?」
「ラ、…アイツは…」
「…俺も同席しよう。道案内に2人も必要かはわからないがな。」
「よろしくおねがいしますね。」
次兄は顎髭とついでに長髪ニット帽も回収と言っていたから、2人を車にのせることは成功。だが、ニット帽さんの言う通りたかが道案内に男2人も必要ないだろう。彼は何かを察したんだろうか。
そして、もう一つ問題があるのだが、この長身成人男性をGT-Rに乗せられるのだろうか…
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作者名:ななを | 作成日時:2022年6月7日 21時