三百七十一話＊『超常の意志』 ページ28
広場の硝煙の中で、ふさぎ込む魚人たちに落ちる影。
巨大な方舟『ノア』が魚人島の外郭をまた圧迫し始めた。
誰一人として、膂力を籠め船を押し返しているジンベエに加勢する者はいない。
悲愴な面持ちで盤面をひたすらに見つめていた。
「誰も、手出しできてない。広場の雑魚はもはやどうでもいいが……！」
唯一、一人の女が外角ギリギリに浮遊していた。
「しゅあーー！」
「わぷゅ。どうしたのさアサギ。」
「シュアーァッ！」
女のポーチから顔を出し、空に向かって吼える蛇。
鋭い瞳孔は一つの巨大な影を捉えていた。
その影はノアの後方に位置し、ノアより何倍も大きな輪郭を持っていた。
徐々に魚人島に近づいてくる。
やがてその巨体を隠す影は薄れ、その全容が明らかになっていく。
「な、んだ……あれ」
女は驚愕し、固まった。
見上げた先には今まで見たどんな海王類であっても及ばない程の巨体。蜥蜴のような鱗。
そして、何より異質な五指揃ったヒトのような腕。
それはまるで女がかつていた世界で語られる怪物の一種、『ヒトガタ』又は『ニンゲン』を呼称される存在のようで。
『―——告ぐ！……広場にいるであろう魚人島に住む我らの同胞諸君に告ぐ！先刻より海峡の親分が抑えていたノアの落下は今、完全に制止！ノアよりも大きな体を有する海王類によりっ！完全に落下が止まっていますっ！』
戦況を見守っていた魚人島の高台の貯空庫の魚人が実況する。
『まるでノアが壊れるのを危惧するかのような手つき……そう！この海王類、手を、我々と同じ手を持っています！こんな海王類は見たことがありませんっ！！！』
実況の言葉通り、ゆっくりと硝子細工を触るように優しくノアを包み、移動させる巨大生物。
魚人島の何倍もあろうかという巨体を海水が満ちている海底で動かしたのにもかかわらず、波は一切起こっていない。
凪の海を彷彿とさせる静けさだけが、魚人島に満ちた。
魚人島に襲いかかった最大の危機は意図も容易く呆気なく解決へと相成った。
『ヒト型海王類っ魚人島外郭付近で浮遊中……！完全に動きは沈黙ッ！！ノアを運び終え、その後一切の動きを見せませんっ、静観……！一体彼奴は何者なのでしょうかっ！』
実況の声が木霊し、恐怖を煽る。
魚人島全域が、あまりにも静かなパニックに支配されようとしていた。
混沌としつつある広場の動きが、不意に止まる。
魚人島に存在するすべてのヒトに、言葉が投げられた。
【ワタシは、超常の意志を告げるもの。魚人島に生ける全ての人よ、そして来訪者よ。聞け。】
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シーデン(プロフ) - Yodukiさん» コメント、有難うございます。只今作品全体の添削を行っておりますゆえ、添削前と後で齟齬が発生してしまっております。随時更新していきますので、何卒ご容赦下さい。尚、添削後のストーリーでは、アサギを要所要所で登場させる予定です。 (2019年10月17日 8時) (
レス) id: f1f9c9e809 (このIDを非表示/違反報告)
Yoduki(プロフ) - アサギ(蛇)出てこないですか？ (2019年10月15日 13時) (レス) id: 64cce11da8 (このIDを非表示/違反報告)
シーデン(プロフ) - 黒音さん» 了解致しました。続編のその9にて、夢主様に関する事柄を多く取り上げ、記載させていただきます。 (2017年12月2日 22時) (レス) id: f1f9c9e809 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - シーデンさん» でしたら、副船長ちゃんの容貌を詳しく載せてくださいませんでしょうか？ (2017年12月2日 21時) (レス) id: b51887888b (このIDを非表示/違反報告)
シーデン(プロフ) - 黒音さん» ご閲覧、有難う御座います。『イメージ画』是非ともお願いしたいのですが、私が何かアクションを起こす必要がありますか？何分こういったことは初めてですので、ご教授お願いします (2017年11月29日 16時) (レス) id: f1f9c9e809 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シーデン | 作成日時：2017年8月9日 12時
