二話* ページ3
赤い服に麦わら帽、少し筋肉質な細マッチョな体に頬の傷。
モンキー・Ｄ・ルフィその人だった。
そんな人間が、動いてしゃべっている。
うん。夢だな。
「俺はルフィ！海賊王になる男だ！！よろしくな！」
「私はA、こちらこそよろしくね」
A。うん。
私が私として確立するための唯一の名。
いくら酒に溺れて二日酔いになっていようとも、それだけははっきりとわかる。
私は、Aだ。
「……っておまえそれ悪魔の実じゃねぇか！？」
やっぱり夢だ。ある種オタクなら絶対に夢見る夢だ。
あり得ないなんてことはあり得ない……が、あり得ちゃってんだよなぁ……。
実際問題初めて明晰夢の類のものを見ているわけだけれども、成程どうして……これを私の脳内イメージが作り出しているのか。
中々に、度し難いぞ私よ。
ルフィ…君って呼べばいいのかな、一応年下だし。が、私の持っている悪魔の実に気がつき言ってきた。
「え？！これが悪魔の実なの？！」
知らなかったということで話を進めよう、そっちの方が好都合な気がする。
夢なんだしどうとでもなるでしょ。
もう色々起きすぎて脳の処理が追いつきません。
考えんのはあきらめた。
「ああ！おれは食ったことあるから知ってる！」
「えぇ？！ルフィ君って能力者だったの？！」
ま、知っているさぁ。
多分億を超えてるよ、知っている人の数。
「ああ！ゴムゴムの実を食べたゴム人間だ」
ミニョーンと自分の頬を伸ばして説明するルフィ君。実物を見るとかなり面白い。
「わお！すごいねー！ルフィ君！」
「にしし！まあな！！それで、Aはそれ、食わねぇのか？」
ん、やっぱり聞かれたか。
迷うなぁ……どうしよう能力者になったら最後、海に嫌われカナズチになってしまう。
「泳げなくなるけど、すんげぇ〜おんもしろいぞ！それ！」
直感――よし食べよう。
さっきも言った通りこれは夢、なるようになるさ！
「ルフィ君がそう言うなら私食べようかな」
我ながらかぶっという効果音が聞こえてきそうな食べっぷりで、果物……悪魔の実に噛り付く。
瞬間口に広がる苦みにえぐみ、スチールウールのような感触に、生魚のような苦さ。
オージーザス！
なんてこったい、こんなまずいなんて聞いてないよぅ！
「……ま、不味い！」
「アッハハハハ！そうそう！ほんっとそれまっじぃんだよな！」
吐き気を催しながらもなんとか飲み込んだ。
食べなければよかったと、心の底から思った私なのでした。
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作者名：シーデン | 作成日時：2017年1月17日 21時
