【短編集】愛してる。【nchj組】

王子様【k】 ページ6

A side



私には夢がある、

王子様が馬に乗ってやって来て、私を拐ってくれる。

そんな夢。


でもこんな夢は幼い頃だけだった…、はず…



ｰｰｰ



s「…Aちゃ〜ん？ 大丈夫？」


『…っえ、あ、うん！ごめん、他のこと考えてた』

s「も〜、しっかりしてくださいよ」

『あはは…ごめんごめん笑』

s「Aちゃんはもう決めた？担当、」

『…え〜、どれにしよっかなぁ…』



現在、文化祭のだし物でする劇の役割決め中。
正直私は目立つのは苦手だし、裏方に徹したい。

顔だってそんなに可愛くないし、何なら隣にいるしにがみくんがやった方が様になる。



『私は…裏方でいいかな。』

s「え〜、そうなんですかぁ…まあ僕も裏方に回ろうと思ってますけど。」

『なんだ、お揃いじゃん笑』


s「あ、でも、」

『ん？』

s「主役するみたいですよ、クロノアさん。」

『へぇ…』

s「チャンスじゃないですか！ヒロインやりましょうよ！！」

『…私じゃ釣り合わないよクロノアさんは…』

s「もう、そうやっていっつも…」



文化祭でする劇はオリジナルストーリー。
簡単に内容を言うと、主役の王子様が囚われたヒロインのお姫様を助けに行く旅をする。

その主役にクロノアさんが抜擢されたとか。
今は主役しか決まっておらず他の役は決まってないみたい。


…私だってヒロイン役をしたくない訳じゃない。
…むしろしたい。

だって、好きだもの。

しにがみくんの言うように、これはチャンスだし…


でも、この劇には困った点がある。
最後のシーン。主役の王子様とヒロインであるお姫様がキスをする。
もちろんフリだけど。

そんなゼロ距離でクロノアさんに近づかれたら私の心臓はパンクしてしまう。



…それに、
クロノアさんは私なんかじゃ嫌だろう…
クラスにはかわいい女の子が沢山いるし、その中にクロノアさんを狙っている子だっている。


…クロノアさんと誰かがフリでもキスするなんて嫌…

だけど、私には昔あったような勇気は無い…





私は、こんな時でも勇気が出ない私が嫌い。

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