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「人参はいちょう切りにして」
『おっけー、いちょう切りね』
はこたろーの指示通りトントントン、と人参をいちょう切にしていく。
今日は私の母とはこたろーのお母さんが2人だけでご飯を食べたいからと私は家を追い出され、今ははこたろーん家でカレーを作ってる。
父たちも2人で飲みに出かけてしまって今はしるこさんを入れて3人しかいない。
はじめは「別に追い出さなくてもいいじゃん」とぶつぶつ文句を言ってたけど今はこうやってはこたろーと一緒にキッチンに立って楽しく料理をするのが嬉しくて、逆にお母さんたちに感謝。
…あの日からはこたろーが例の彼女と電話をすることが減った…というか0に近い。それはあの人に彼氏ができたからで。
嬉しいというのが本音だけど、はこたろーはやっぱりどこか寂しそうだった。
そんな寂しそうな姿を見てると、私もなんだか気分が上がらなくて……私の世界ははこたろー中心に回ってるなぁ、とつくづく思う。
『わっ、あぶな……指切るところだった』
関係ないこと考えてると包丁が人差し指ギリギリのところに落ちてヒヤッとする。
「ちょっと、気をつけて」
『わ、わかってるよ』
馬鹿にするような顔でお肉を炒めるはこたろーに口を尖らせた。
誰のせいだっつーの。
…いや、自分が悪いんだけどさ。
今度はちゃんと集中しようと人参と睨めっこしてると「Aはさ、」とはこたろーが言葉を発した。
私は包丁を人参から離して、はこたろーを見る。
「…失恋、したことある?」
はこたろーは鍋から目を離すことなく言葉を続けた。
その言葉に一瞬戸惑いながらも「ない、かな」と返した。
ある意味、失恋真っ最中なんだけどね。
私たちはあまり一緒にいても会話という会話をしない。無言の方が確実に多い。でも気まずいと感じたことはなくて、むしろ私はそれが居心地が良かったりする。
会話があっても基本私が一方的に話しかけて、それに相槌を打ちながらはこたろーが聞いてくれることがほとんどだった。だからこうやってはこたろーから話をはじめるのは本当に珍しい。
でもどうせならもっと楽しい話題が良かったよ…。
内容が内容だからどんな反応したらいいか分かんないじゃん。
『も、もしかして……失恋しちゃったの?』
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おゆき(プロフ) - ましろさん» コメントありがとうございます!あやかさん…私はおゆきと言います!よろしくお願いします(汗)少し最後は駆け足になりましたが、素敵な感想をいただいて無事に完結させることができました。ありがとうございました! (2021年6月13日 15時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - すごくきゅんとして、続きがとっても気になります!ゆっくり、あやかさんの無理のないペースで素敵な作品を仕上げていってください!すっかりファンなので、楽しみに待っています。 (2021年4月15日 16時) (レス) id: ee9621a8b6 (このIDを非表示/違反報告)
おゆき(プロフ) - るんさん» 見てくださってありがとうございます!少しずつになりますが、完結まで頑張って更新していきます!ありがとうございます! (2021年4月15日 14時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいてます。更新楽しみにしてます!!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: f14a3f6d70 (このIDを非表示/違反報告)
おゆき(プロフ) - ねこたろうさん» ありがとうございます!嬉しいお言葉ありがとうございます!少しずつ書き進めていくので気長に待っていただけると嬉しいです! (2021年3月11日 7時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おゆき | 作成日時:2021年1月28日 23時