37 ページ37
それから私は冷えピタを求めてスーパーへ向かった。
飲み物と軽く食べられそうなものも買って戻ると、かるてっとさんは眠っていて、
冷えピタとタオルを持ってベッドのそばに腰を下ろす。しんどそうに眠る姿を見て、
まつ毛長いな、とか。肌綺麗だな、とか。……好きだなぁ、とか。
そんなことを考えてしまう自分がいて、パチンと頬を叩いた。
私の馬鹿、今は看病するためにいるんだから。と自分に言い聞かす。
汗で額に張り付いた前髪をそっとのけて、タオルで拭こうとすると、
『ごめん、起こしちゃった…?』
いつの間にか起きていたかるてっとさんと目が合って。
熱を孕んだ瞳がゆらゆら揺れてる。
「かるてっとさん?」
何も言わないかるてっとさんに首を傾げる。
どうしたんだろ?
これ貼る?と冷えピタをかるてっとさんに見せる。それでも全く反応がない。目は合ってるんだけどな……熱でぼーっとしてるのかな。
そうだとしたら、結構重症じゃないのこれ。
急に不安になって休みの日でも空いてる病院を探そうとスマホを取り出した時、
「………A、」
『!』
ずっと無言だったかるてっとさんがやっと喋ったと思ったら、突然腕を引かれて体勢が崩れる。
驚いて手から離したスマホが床へ吹っ飛んだのが横目で見えた。
倒れ込む前にかるてっとさんの顔の横に手をついてなんとか耐えた。
けど突然距離が縮んで、心臓が忙しく動き始めた。
体を引こうと思ったけど、しっかり腕を掴まれていて動けない。
『離して、』
「なんで?」
『なんでって……だ、大丈夫?熱でおかしくなっちゃった?』
「なってねぇよ」と呟く荒い口調とは反対に表情はあまりにも優しくて息を飲む。
かるてっとさんは空いてる方の手で私の髪をそっと耳にかけてきた。
なになになに、一体どうしたの。
「…なに、」
「……ピアス、つけてくれてんだ」
戸惑って動けない私をよそに、かるてっとさんは私の耳に触れて笑った。
ピ、ピアス…?
ああ、誕生日に貰ったやつ…。
そりゃ、つけてるよ。嬉しくて、もうほぼ毎日つけてるよ。
「似合ってる」
思ってもなかった言葉が落ちてきて、みるみる顔に熱が集まってくる。
『…あ、りがと、』
なんとか声を絞り出したけど、
なにこれ。なんなのこれ。
この甘い空間に、頭が追いつかない。
267人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おゆき(プロフ) - りんさん» うわあ、嬉しいです…!でも心臓痛くなっちゃいましたか…ありがとうございました、と言っていいんでしょうか(笑)コメントありがとうございました。 (2021年4月15日 14時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
おゆき(プロフ) - 雪さん» 素敵だなんてありがとうございます!嬉しいです!自分のペースになりますが、楽しんで更新していきます!ありがとうございます! (2021年4月15日 14時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - キュンキュンしすぎて心臓痛くなりました! (2021年4月2日 10時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 素敵すぎて一気に読ませて頂きました!また何回も読ませて頂きます。他の更新ものんびりと楽しみにしていますね。 (2021年3月6日 13時) (レス) id: 35fa8c2320 (このIDを非表示/違反報告)
おゆき(プロフ) - しめじさん» ちゃんと伝わりました!(笑)嬉しいです!ありがとうございます!次作もよかったらご覧になってください! (2021年2月6日 9時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おゆき | 作成日時:2020年11月29日 9時