ダメ女と女子力男子【灰】

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『…何買うか決めてるの？』

「んー、まだ。でもこの前マフラー欲しがってんだよな」


マフラーか。


あたりを見渡してみるけど、メンズブランドがない。あるのはかわいい雑貨やレディースブランドばかり。


メンズは3階だった気がするな。



振り向くと、かるてっとさんがすでに可愛らしい雑貨屋さんでベージュのチェックのマフラーを手にしていた。


近づくと「かわいくね？」とマフラーをかるてっとさんは自分の首に巻いた。



『可愛いけど……可愛すぎない？メンズじゃなくて良いの？』


私もかるてっとさんの横まで近づいて、目についたマフラーを手に取る。


ここのブランド可愛いよなあ、私も持ってるし。



男の人も使えなくも無いけど、ちょっと可愛すぎるような気がする。


思った通りに伝えると「あ、違う違う。」とかるてっとさんが笑う。


私はかるてっとさんを見て首を傾げた。



「プレゼント渡す相手、女だから」


　

どく、と音をたてた心臓。


押し寄せてくる黒い感情。



『あ、そうなんだ、』




そっと持っていたマフラーを棚に戻した。



私の知らない女の子へのプレゼント。知っていたら断ってたのに、なんて思う私は酷い奴かな。



一気に楽しい時間が、辛いものに変わっていく。


だけど、かるてっとさんが誰にプレゼントをあげようが私にとやかく言う筋合いはないし、一回引き受けたものを今更嫌だと言うのも気が引ける。

そんな嫌な女にはなりたくない。




でも、これだけは聞いておきたい。



『誰に、あげるの…？』



これは聞かずにはいられない。



その言葉を聞いて私へ視線を落としたかるてっとさんが、にやり笑った。



「…気になるの？」



その余裕な表情に唇を噛みたくなるのをグッと我慢する。


気になるよりも一瞬悔しい気持ちが上回って『別に』と返した。…本当は気になって仕方ないくせに。





「なんだ、興味ねぇのかよ」


笑うかるてっとさんの表情がなんかいつもとは違って、どこか悲しそうに見えたのは私の気のせいだろうか。

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