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「お前が大人しくついてくるって言うなら、痛い思いはしなくて済むが…どうする?」
『誰があんたなんかに……死んでもお断りだ』
これはクロウに近づくチャンスだ。だけど、こんな武器も何もない状態で乗り込むほど私も馬鹿じゃない。
連れていかれてすぐ殺されたんじゃ、今までの努力も水の泡だ。
「そうか、残念だ。なら、ちょっと乱暴してでも大人しくしてもらうしかないな」
ゆっくり近づいてきた男は、近くにあった消化器を持ち上げ私に振り上げる。
……探せ、この男から逃げる術を。
真っ赤な消化器が勢いよく振り下ろされる。
ダメだ、頭が回らない。
私は、こんなところでーーーーー
「A!!目開けろ!!!!!!」
ーーーー突然、聞こえてきた声。
久しぶりに聞いたその声に、閉じかけていた目を開ける。
………なんで?
なんで、ここに居るの。
『………しるこ、さん、』
私の目には、男に銃口を向けるしるこさんがうつっていた。
「ああ?誰だ、お前」
男は振り返り、初めて険しい顔を見せた。
久しぶりに見たしるこさんの顔は少し疲れていて、以前よりクマが濃くなった気がする。………きっと私のせい、だよね。
し「手をあげて下がれ」
「嫌だと言ったら?」
し「撃つ」
「…さすがに銃には勝てねぇな」
銃を構えるしるこさんに、男は消化器を地面に置いて降参ポーズを取った。
し「そのまま後ろに下がれ」
「わかったわかった。そう殺気立てんなよ」
あっさり言うことを聞く男に、警戒しながらしるこさんは私の隣にしゃがみ込んだ。
し「…………Aの馬鹿……探したでしょ、」
『………なんで、仕事は夜じゃ、』
し「Aの行動なんてお見通しだよ。それに、うちにはいちはちがいるからね。」
…いちはちさんか。
私がいた形跡は全て消して行動していたつもりだったんだけど、みんなには敵わないってことか。
し「また、無茶して……」
悲しそうな声。
…私はしるこさんの顔を見ることができなかった。
「感動の再会ってやつか?」
し「……そうだよ。だから邪魔するな」
冷たく吐き捨てるように言ったしるこさんに、男はハッと鼻で笑う。
「くだらねぇな。そういう仲間ってのが裏の世界で生きる俺らにとって、弱みになるんだぜ?」
し「…黙れ」
普段は全然怒らないしるこさんの顔が、怒りで染まっていた。
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おゆき(プロフ) - meさん» ただいまです!お待たせしてしまってすいませんでした。ありがとうございます!また少しずつ更新していくので、見ていただけると嬉しいです! (2021年5月18日 18時) (レス) id: 1843c20691 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - おかえりなさい。また公開してもらえて本当に嬉しいです。無理だけはしないでくださいね! (2021年5月18日 12時) (レス) id: 47178bfabc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おゆき | 作成日時:2020年11月13日 14時