おやゆびひめの日々

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栗山監督とちょっと相談しながら、明日明後日の先発陣の状態を考えていれば、巨体が影を作ってきた。

16「栗山監督」
89「ん、翔平、どうした」

……噂をすれば、ってこういう時のためにある言葉なのかもしれない。ついさっき、私の胃痛を1.5倍くらいにしてくれた二刀流が、すぐ後ろにのそっと現れた。

しかもなんだ、その無駄にきりっとした表情。やめろ、嘘だろ、胃痛が本物になってしまう。いや、本当ならジャパンにとってはこの上ない朗報なんだけど。私の胃が死ぬだけで。

16「俺はいけますよ、監督」
「ゔっ……」

あぁ、さよなら私の胃。今の発言で、わりと本気で逝った気がする。だってどう考えたって、今の「いけますよ」は、「決勝、投げれますよ」の意じゃん。一平さん通さなくても分かるよ、それくらいは。

89「うん、ありがとね、翔平。というわけで、Aちゃん、1人確定ね」
「はい……」

あぁ、監督嬉しそうですね。そりゃあそうですよね、翔平くんをリリーフで計算していいとかこの上ない贅沢ですよね。私だって自分が今ここで肩ポンされてなきゃ、飛んで喜んだよ。

16「あはっ。Aさん、調整、手伝ってくださいね」
「分かった、分かったからちょっとだけ固める時間をちょうだい」
16「何を？」
「覚悟とか色々」

そう言えば、まるで全く意味がわからないといった様子のキョトン顔をされた。それをして可愛いのは20歳までだからね？自分の年齢省みろ。

16「投げるのは俺で、Aさんじゃないっすよ」
「そんなことは分かってるよ。違うの、色々ありすぎてちょっとパンクしてるの」

君みたいにいつだってフランク泰然自若でいられるような人間じゃないの、私は。佐々木くん、由伸くん、今永くん、翔平くんをぽんと任されて「ふ〜ん、仕方ないな！」なんて言えるほど図太い神経してないのよ。しかもここにダルさんが上乗せされるかもしれないって。

ちらりと横を見れば、恐ろしいブルペン設計を聞いてしまったらしい吉井コーチと厚澤コーチが私と同じくらい青い顔をして立っていた。元気そうなのは日ハム師弟組だけ。

89「よろしくな、翔平」
16「任せてください、監督。Aさんも頑張りましょうね」
「はい……」


(どどどどうしよう、私の双肩にジャパンの宝が)
(落ち着け……いや俺も無理かもしらん)
(俺も無理じゃ……)

ーーーーー

この頃には今永選手はもう決勝を覚悟してたんですよね…… すごすぎるなぁ

それではまた、次のお話で！

haru🌷

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