おやゆびひめの日々 3

泥臭くても　6/21 ページ44

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無事に交流戦も終わり、なんと嬉しいことに優勝も決まった。まぁ最後は翌日以降の他球団の結果待ちという、ちょっと宙ぶらりんな感じではあったんだけど。
それでもね、優勝は優勝なので。3000万が確定して裏方の夢も救われたしね。

そんな訳で、お祝いムードの前夜から一転。今日は一軍二軍合同での練習が横須賀で行われている。

「A、ちょいこっち来て」
「はぁい！」

前回今永くんには酷評された白スニーカーではなく、今日はちゃんと暗い色の靴で、たったっと土のグラウンドを走る。

それにしてもあの時はあんなに怒られると思わなかったな。帰る直前まで、ぶつぶつ文句言われたもんな。
なんでなんだろ、こっぴどく振られた元カノが白スニーカー好きだったとか？

そんなことを考えながら浩康さんのところに行けば、隣りには爽やかな笑顔が眩しい林くんが立っていた。

「来ました！浩康さん、何のご用でしょう」
「おう、お疲れさん。林なんやけど、ちょっとテーピングズレてきたから直したってくれる？」
00「Aさん、お疲れ様です！お願いします！」
「はいはい、失礼します」

ぱぱっと巻かれているものを取ってから、ウェストポーチからテーピングを取り出す。

練習の自打球による骨折という何とも言い難い怪我をした林くん。当然、二軍での調整ということになった訳だけど、これをしっかりいい機会にしてまた上がってきてほしいな。

しゅるしゅると巻くのをじぃっと見つめてくるので、ちょっぴり恥ずかしくなる。なんでそんなに見てくるの。別に大したことしてないってば。
ちらりと横を見れば、林くんだけじゃなくて、浩康さんもじぃっと見つめてきてる。だから、どうして。

「ん、これでおしまい。はい、また頑張って」
00「へへっ、ありがとうございます！」

最後まで巻き終えて、よしと逆の手をぽんと叩けば、ぱぁっと眩しい笑顔が返ってきた。浩康さん、浩康さん、気持ちは分かりますが、その笑顔は流石にパパの顔ですよ。せめてコーチとしての感情くらいに留めてください。

守備練習へ戻っていく2人を見送っていれば、ふと背中に感じる視線。ぱっと振り返れば、若い子たちが揃ってきょとんと首を傾げていた。
林くんもそうだけど、若い子みんな表情豊かだね。大体考えてることが察せるよ。



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