山口忠 × 教室の窓際 ページ5
「雨だね…」
「そうだね…」
教室の窓際で、水たまりの広がる校庭を横目に眺めながら、俺たちは向かい合って喋っていた。きっと彼女は雨が好きではないのだろう。いつもより少しだけ愁いを帯びた瞳をしている。
その瞳が、彼女の美しさをさらに引き立てているような気がする。なんていう少しキザな文章が、ふと頭の中によぎった。恥ずかしい。俺なんかがそんなかっこいいこと・・・
「忠くん、どうかした?ぼーっとしてるけど…」
「え?あ、ううん!なんでもない!」
君のことを考えていました、なんて言えるわけがない。所詮俺らはただのクラスメートで。たまたま席が隣で、たまたま今日二人で日直をすることになって、たまたまその仕事が早く終わったから、こうやって話しているだけ。
いや、あの、俺からしたら、彼女はその…。想い人なわけだけれども、彼女からしたら・・・。うん、考えるのはよそう。
「そろそろ帰ろっか。」
そう言って振り返ったAちゃんの肘が、トン と後ろの棚に置いてあった花瓶に触れてしまった。
危ない
そう思った俺は、花瓶に向かって手を伸ばした。
あ、届かない。割れる。
___ガッシャーン
一瞬だけ、世界が止まったような気がした。
間違いなく花瓶は割れて散らばっているはず。
なのに、どうして音が聞こえないのだろうか。
いや、聞こえてるんだけど、そちらの方向に意識が向かない。
だって、、、
「ご、ごめん!その、これは、事故で・・・!」
「いや、、私こそ・・・」
Aちゃんとキスをしていたから。
慌てて離れたけれど、その感触はしっかりと唇が覚えている。どちらからともなく目をそらし、割れた花瓶の片づけをはじめる。
「事故じゃなくても良いのに」
「え?」
割れた破片を拾いながら、彼女がつぶやいた言葉は意外すぎるもので。思わず顔を上げる。
「あ、ううん、なんでもないよ。」
「ごめん、ちゃんと聞こえちゃったんだ。もう一回言って?」
どうしたんだろ、俺。いつもの俺らしくない。
でも、もう引き返せない気がして。
「事故じゃなくても、キスしてくれていいのにって…」
真っ赤な顔をしてうつむく彼女が愛おしすぎて、顎を軽く持ち上げて、意識的にその柔らかい唇に口づけた午後4時すぎ
止まっていた世界が再び動き出した。
【山口忠×教室の窓際】
(雨雲が運ぶハプニング)
---抹茶プリン様リク---
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作者名:和紗 | 作成日時:2016年5月22日 15時