☆短編集3☆

苛めたくなる1.(五ヱ門) ページ9

＊*





私の好きな人は多分、
私のことを好きじゃない





そんな言葉がぐるぐると回るAの前で五ヱ門はいつも通りの瞑想を続けていた





今日は、ルパンと次元が食事の買い出しの当番で街に行っているため、特に用事のなかったAはリビングで五ヱ門と二人でお留守番なのだ





だが、二人きりとはいっても、五ヱ門は瞑想をすると言ったまま、今も瞑想を続けており、部屋の静かさはAが一人でいる時と何ら変わらない
そんな中、彼に気づかれないようににこそりと見る





漆黒の髪に綺麗な肌、男とは思えないほど繊細な顔立ち




いつ見ても綺麗だなあ
とAも毎度のこと見惚れている





そんな少しドキドキした時間が３０分ほど経った時、ふと窓から見える灰色の空に気が付いた





窓ガラスに叩きつけられる雨が、ポツポツから雨脚がだんだんと強くなってくるのが聞こえる





あ！そういえば窓開けたままだった！


Aは瞑想中の五ヱ門に聞こえないように慌てながらも静かに立ち上がった




確か、廊下の窓だったはず
と部屋のドアに手をかけたとき





「何処へ行く」





突然、後ろから声がしてくるりと振り返ると瞑想中だった五ヱ門の目が片方だけこちらを見ている





「え、あ、雨降ってきたから窓閉めてくるね」




Aはまさか自分の行動を見られているとは思わず、少しは気にしてもらえてるんだ
と胸の奥が温かくなった






「雨か、全く気が付かなかったな」




「五ヱ門、瞑想中だったもんね」





邪魔しちゃってごめんね？と一言言えば彼はきっとそんな事ないと言ってまた瞑想に戻るだろうと




Aは片想い特有の切ない感情に包まれ、窓を閉めに行くことを思い出す





扉に向き直りドアノブを回そうとドアノブに手をかけると、先ほどよりも近い位置で声がした









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