05.理事長室 ページ5
side S
コンコンコンコン
「翔です。」
「入れ」
俺に短い返事で部屋に入るよう促した。
「失礼致します。おはようございます。」
部屋に入り、声をかけると朝が苦手な祖父が必死に山ほど溜まった書類に目を通しているのが目に入った
「おじい様また昨日仕事サボってたんですか」
「なに、人聞きの悪いことを。昨日は出張だ。」
「一昨日までイギリスでゴルフを嗜まれて昨日帰国したとばあやから聞きましたけど？」
「和泉め。いらんこと言いおって、」
60すぎなのに元気すぎる…このじーさん。
「今日が入学式と言うことで仕事が山積みなのわかってらしたよね」
「えええいうるさいうるさい！そんな事のために呼んだわけじゃない！」
自分の状況が悪くなると機嫌が悪くなる。これでもＳＫＦの元社長で、この学校の理事長だ。
「……今日はなんのご要件で」
そう聞くと明らかに機嫌が良くなった祖父が、
「可愛い可愛い孫の翔にな、私が直接今日読む新入生代表スピーチの原稿を渡してやろうと思ったのじゃ」
これは今目を通したやつだな。
「ありがとうございます。これでご要件は以上ですか？」
「そうせかせかするな可愛いくない孫じゃな。」
さっき可愛いったのはどこの誰だよ。
「いま貴方が初めて渡してきた紙を約１時間後から始まる入学式で発表しないといけないから早く目を通したいんです」
「そうかそうか。じゃあここで今覚えろ」
ほら、そうやってすぐむしゃぶりをする。
「わかりましたよ！もう」
目を通すとそんなに文章は長くなくて安心した。これぐらいなら5分あれば覚えれる
「覚えたか？」
おじい様は時間を図っていたのか5分後に声をかけてきた。
「覚えました。」
「よし。それでこそ将来櫻井家を継ぐ男だ。
ああ、大きくなったなぁ翔。もう高校生か」
今ようやく分かった。
おじい様は寂しくて今日は呼んだのだと。
あと代表スピーチの原稿用紙を渡すためでもある。
「大きくなりましたよ。入学式で俺の成長見ててくださいね。」
そういうとおじい様は嬉しそうに頷き、そして急に照れくさかったのか手でさっさっと攫う動作をして俺を部屋から出るよう促した。
「では失礼致します。」
そして俺は理事長室から出た。
出た瞬間、誰も廊下にはいないであろうと踏んでいた理事長の前の廊下には迷子であろう人がいた。
おじい様のツンデレにちょっとニヤけてたからすごい恥ずかしい！
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作者名：凛月 | 作成日時：2017年6月11日 15時
