ギュンってしました ページ31
一応連絡をとってみると、虎杖くんが反応を返してくれた。
どちらも金沢駅を経由するとのことなので、金沢で合流してから一緒に目的地に向かおう、ということになった。
二人は昼頃に金沢に到着する予定だという。
東京駅から金沢までで二時間半かかるので、遅くとも九時頃に高専を出れば充分に間に合う。
現在時刻午前六時、野薔薇ちゃんは起きているだろうか。
彼女の部屋の前に立ち軽いノックをすると、中からは小さな呻き声とゴソゴソという物音が聞こえてきた。
まあ、こんな朝早くなら寝ていたに決まってる。
暫く待っていると扉が開き、目を擦る野薔薇ちゃんが出てきた。
「…Aじゃない。何?まだ六時なんだけど。」
ふぁ、と小さく欠伸をしながら私を睨む。
向けられた視線は恨めしそうだが、かわいいので問題なしだ。
「おはよう、野薔薇ちゃん。ごめんね朝早くから。
眠そうなところ申し訳ないんだけど、さっき五条先生が来て石川まで任務だ、って。
虎杖くんと伏黒くんはお昼には金沢到着らしいから、私達もそれまでに金沢に集合して二人と合流。
…というわけで、九時頃には高専を出ないといけないんだ。身支度に色々時間がかかるかなと思って、起こしに来た次第だよ。」
任務、という言葉を聞いてあからさまに嫌そうな顔をして、彼女は深いため息をついた。
「うっわ、折角東京の学校に通ってるのに何が悲しくて地方まで仕事なんか…。
ま、起こしに来てくれてありがと。」
彼女は目を細めてふっと少し微笑んだ。
けれど、さっきよりも目が覚めてきたようで、すぐに私の格好を指さしながら随分準備万端だ、と指摘する。
昨日寝落ちして今朝早くに目が覚めたのだ、と言えば納得したようだった。
……いや待って、何今の可愛かった!!!
きゅってした!!
胸の奥がこそばゆいのを必死に押さえつける。
「でもスラックスって動きやすいんだね、着てみてびっくりしちゃった。
学ランも初めてなんだけど着方わかんなくてちょっと手間取っちゃった。」
「へぇ…」
荒ぶる胸の内を悟られないようにあははと笑う。
彼女は返事をして暫く、私を上から下まで見つめた。
「最初は女子高生なのにスカートじゃないなんて何考えてんだって思ってたけど、似合ってるわよ。ソレ。」
それは、ちょっと狡いと思う。
そんな風に笑いながら褒められるとは思わないじゃないか。
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作者名:枯道 | 作成日時:2021年1月24日 10時