一方その頃 ページ3
東京。
人の感情が渦巻く幸福と呪いの街。
「折角こんな都心に来たっていうのに…なんで任務なのよ。」
口を尖らせながら不機嫌そうに一人呟く茶髪の少女がいた。
それに答える者はおらず、細く暗い道に彼女の声だけが響く。
……こうした狭く湿っぽい路地に恐怖を抱く人間は少なくない。
だからこそ、小さい呪霊がちょこまかと湧いて出てくるわけだ。
一体一体はそう強くないのだが、いかんせん数が多い上に範囲が広すぎる。
「この辺り一帯の裏路地」という広すぎる範囲を3人で手分けすることに、異論がある者はいなかった。
「一時間ぶっ通しで祓い続けてやったから、流石にだいぶ片付いたわね…」
この辺一帯にはもう呪霊の気配はない。
集合場所に行ってアイツら二人を待っててやろう、そう思い足を進める。
薄暗い路地裏からはほとんど見えなかった空だが、路地を抜けると既にオレンジと紫に染まっていた。
眩しくて目を細くすると、丁度目の前を若いカップルが通り過ぎた。
途方もなく幸せそうな顔をしていて、なんだか無性に腹が立ってくる。
少し眉をひそめて、こうなったら一刻も早く帰ってやると決意した。
詳しい集合場所はどこだったかと地図アプリを開いた。
「……って、真反対じゃない。路地出るところ逆だったか…。」
仕方なく今来た道を戻ると、なにやら言い争う声が聞こえた。
若い女と男の声。
「(痴話喧嘩なら他所でやれや……！)」
とはいえここを通るのがいちばん手っ取り早い。
さっさと抜けようと道を曲がれば。
「おねが、離して…！」
「大丈夫だから、ね？ちょっとだけ着いてきてって。」
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作者名：枯道 | 作成日時：2021年1月24日 10時
