知らないことだらけ ページ11
「ところでさ、この車どしたの。」
ずっと気になっていたうちの一つを父に尋ねる。
やけに座り心地がいい座席を、指の腹で撫でる。
「お、この車か?兄貴に借りたんだよ。明日まで使っていいとさ。」
……え、車を?
しかもこんな良さそうな車を?借りた?
白一色に傷一つない車の外見を思い出しながら、父に聞いてみる。
「私の叔父さんって、割とお金持ちなの?」
「割とな。」
あ、そうなんだ。知らなかったんですけど。
車を一日以上貸せるってことは、もう一台車を持っていたりするのだろうか。
セレブムーヴ羨ましいな……。
「ふーん……あとさ、なんで釘崎さんたちのこと見た後すぐに帰ろうって言ったの?」
「う、バレてた?」
私と同じで父は嘘を吐くのが絶望的に下手だ。
なぜあれでバレないと思ったのか。
「いやまあ、そこら辺は実家着いてから話すわ。」
「…ちょっと待ってこれ叔父さんの家向かってるの?」
私はてっきりホテルに向かってるものだと思ってたのだが。
よくよく周りを観察してみると、都会のビルが乱立する地域を抜け、車は少し郊外の木が多い辺りに来ているみたいだった。
「うん。ちなみに母さんも兄貴ん家で待ってる。」
じゃあ、話し合いの後から母さんはずっと叔父さんの家にいるというのだろうか。
「Aには、話さなくちゃいけないことが沢山あるんだよ。」
久しく聞いた事のなかった父の真剣な声色だけを響かせて、車は静かに叔父の家へ近づいていく。
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作者名:枯道 | 作成日時:2021年1月24日 10時