愛より恋よりお笑いで (ページ24)

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プライベートで全く笑えなくなっていった

それは芸人としてどうなのかと思ったけどもう私は芸人とちゃうわって脳裏によぎってしもうて

自分でも自分の存在意義って何やろって思いだしてしまうともう止まらんくなってきた

誰かに相談したい...誰かに話したい......誰かに聞いてもらいたい

でも、私の周りには誰もいなかった

同期も先輩も仲間も友達も

孤独やった

一回事務所で森田さんを見つけてあんなことがあったけど私は普通に話したかったし

ただ会いたかった、聞いてもらいたかった

森田さんに向かって少し小走りで走って話しかけようとしたら

「もり東「森田さん！」

私じゃなくて東口さんの声で私の声がかき消されてしまった

森「おぉ！なんや東口」

東「明日のライブのネタ合わせしませんか？」

森「ええで！俺も丁度東口探しとったところやったから、ネタ合わせしよか」

東「完璧なものにしましょ」

森「そやなー」

笑いながら会話して歩き出した後姿を見てしまったら私にはもう入り込む隙間もなかった

「あんな楽しそうな森田さん、久々見たかも」

私の前であんなに楽しそうにしてくれてたっけ？

私の前であんな風にネタの事とか言ってくれてたっけ？

もう誰の事も分からなくなっていた、誰も信用できなくなってきた

眠れなくなった、食べれなくなった、笑えなくなった

でもテレビでは笑えるし食べれるしいろいろできる

その結果カメラが廻っていないところでは「やめたい」って呟いてた

半分うつ病みたいになってたのかもしれへん、あの事件以来マネージャーは私の事を心配してくれて

色々大丈夫？とか声をかけてくれていたけどそれも思えない、考えられないくらいに忙しかった

いくらテレビの前では取り繕っててもやっぱり変化は出るもので段々と痩せて行って

顔色も悪くなっていってテレビ側からも心配されるようになって松竹の上の人からもこのままでは

アカンと思ったのか強制的に活動を休止させられて大阪の病院に入院することになった

親は泣くぐらい心配されたがなんで心配しているのかすら分からなくなっていて

ただひたすら窓の外を見たり天井の壁を眺め続ける日々を過ごした

偶にマネージャーが仕事やこれからの事に関していろいろ言っているときに昔読んだ本を思い出した

「あぁ人間失格や、うちは壊れてもうたんやな」

私は窓を見ながらそう呟いた

マネージャーは泣きながら私の病室から静かに出て行った